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IBD患者さんのお腹の張りに低FODMAP食が効果的

FODMAP

IBDの症状として腹痛や下痢だけでなく、お腹の張り (膨満感) を感じる方が多くおります。

そのような症状に低FODMAP食が効果的であるという論文を紹介します。

低FODMAP食がIBDに有効か

この研究では、信頼のおけるランダム化試験という方法で、はじめて低FODMAP食がIBDに有効かを明らかにする試験が行われました。

方法は、寛解期のIBD患者さんを低FODMAP食と通常食の2つのグループに分けて4週間、その食事を続けました。その結果、膨満感などの症状が52%低下したと報告しています。また生活の質を感じた患者さんが優位に増えました。(参考:Gastrojournal

よって、お腹の張りで困っている場合はかなり有効な食事方法だと思います。

しかし、炎症の数値は、変わりはなかったことも明らかになっております。

また、論文の最後で試験を行った4週間は問題ないが、それよりも長期にわたって続けることの安全性はわからないので注意するようにとも書いていますので、念のためご注意ください。

低FODMAP食とは

低FODMAP食とは2005年にオーストラリアのモナッシュ大学でIBS (過敏性腸症候群) の症状緩和のために開発された食事方法です。
IBSとIBDは、どちらも腸炎症疾患でIBDの患者さんにはIBSが併発していることもあります。

FODMAPはFermentable (発酵性の) Oligosaccharides (オリゴ糖) Disaccharides (二糖類) Monosaccharides (単糖類) And Polyols (ポリオール)のそれぞれの食品成分の頭文字から構成されております。

低FODMAP食とはそれら成分を避ける食べ方です。

FODMAPは小腸では吸収されづらく、大腸に運ばれて菌のエサになります。

それらの栄養素は大腸で発酵により分解されるためガスが出ます。その結果、ガスが溜まり膨満感を感じる原因になります。

また水分を吸収する働きがあり、ガスと水分で腸の壁を引き伸ばします。通常では、それほど問題にならなくても腸に炎症があり過敏な状態では、痛みをともなうお腹の張りや下痢の原因になります。

FODMAPそれぞれの食品成分

個々の食品成分について説明します。

オリゴ糖

オリゴ糖は糖分がいくつも結合した物質です。お腹に良いイメージを持っている方も多いと思います。

ここでは、体で分解しにくいフルクタンとガラクタンという2種類のオリゴ糖が該当します。フルクタンとガラクタンが豊富に含まれる野菜には小麦やライ麦、玉ねぎ、にんにくなどがあります。

二糖類

二糖類は、糖が二つ結合した物質でFODMAPではフルクトースを指します。フルクトースは蜂蜜やコーンシロップ (食品にはぶどう糖果糖液糖に書かれていることが多いです)、いくつかの果物に多く含まれています。

単糖類

単糖類は、糖が一つの物質で、ここではラクトースになりますラクトースは牛乳および乳製品に多く含まれます。牛乳を飲んでお腹が痛くなる人は特に注意しましょう。症状がでない人は大丈夫なこともあります。

ポリオール

ポリオールとはキシリトールやマンニトールのような糖アルコールと言われるものです。ポリオールを多く含む果物や野菜があります。また人工甘味料の一部はポリオールの仲間です。例えば人工甘味料のキシリトール入りのガムなどは、下痢を起こすことがよく知られています。

低FODMAP食を推奨している研究室では、FODMAPの代替品すなわち、その食べ物の変わりとなる食べ物を紹介した表がありますので参考にしてみてください。(表:PDF

FODMAP

FODMAPの日本食表

またすべてのFODMAPが合わないわけではないので自分に合うか合わないかを見極める方法も紹介されています。制約が多いと大変ですし長続きしないと思いますので、実践していく上でよい方法だと思います。

高FODMAP FOODS低FODMAP 代替食
野菜アスパラガス、カリフラワー、にんにく、グリーンピース、マッシュルーム、玉ねぎ、ナス、ピーマン、ニンジン、きゅうり、レタス、トマト、ズッキーニ
フルーツリンゴ、チェリー、ドライフルーツ、マンゴー、桃、梨、プラム、スイカメロン、ブドウ、キウイフルーツ、オレンジ、パイナップル、イチゴ
乳製品牛乳、カスタード、アイスクリーム、豆乳 (大豆)、加糖練乳  (牛乳が合わない人)アーモンドミルク、チーズ、ラクトースを含まないの牛乳
タンパク質源豆類、加工肉卵、豆腐、肉、シーフード、テンペ
炭水化物小麦/ライ麦/大麦ベースのパン、朝食用シリアル、ビスケット、スナック製品米、餅、コーンフレーク、オート麦、キノアフレーク、キノア
糖分高果糖コーンシロップ、蜂蜜、人工甘味料チョコレート、メープルシロップ、ライスモルトシロップ、砂糖
ナッツカシューナッツ、ピスタチオマカダミアナッツ、ピーナッツ、 くるみ、かぼちゃの種
  1. 2~6週間かけてFODMAP食をすべて低FODMAP食に変更します。その際は、表を参考に栄養が偏らないように注意しましょう。
  2. 個人的に合うか合わないかを明らかにするため、8~12週かけて、FODMAPから1つ選んで3日以上続けて様子を見てみます。摂る量は3日かけて徐々に増やし、症状に変化がないか確認しましょう。
  3. 個人的に合わないFODMAPを認識して、合わないFODMAPをできるだけ避けましょう。合わない食べ物だけを避けて最小限に制約した食事を行いましょう。