治療法

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?

潰瘍性大腸炎は難病に指定されており、現在はまだ根本的な治療が見つかっていない病気です。腸の内部に炎症が起き、腹痛や下痢、血便などさまざまな症状を引き起こします。
潰瘍性大腸炎を患っている方は、2016年時点で166,060人にのぼり、年々増え続けていると言われています。(参考:難病情報センター「潰瘍性大腸炎」)

治療法についてはさまざまな研究がされており、その中でも現在は「便移植」が注目されています。健康な人の腸内細菌を移植し、腸内環境の改善をはかる治療法です。
本記事では、潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の気になる費用面について解説します。
ぜひ最後までご覧ください。

このサイトでは当初から便移植について追いかけてきました。
便移植
便移植によるIBD治療と今後の展望便移植療法 (FMT: Fecal Microbiota Transplantation) という言葉をテレビなどのメディアやインターネ...

2023年4月初めて日本で便移植が実施された

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
「便移植」は、別名腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation: FMT)とも呼ばれています。潰瘍性大腸炎の他にも、再発性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症や、クローン病に対して、海外を中心に最近行われている治療法です。

しかし、投与経路、投与量、導入回数、ドナーの選定方法などがしっかりと決まっている治療ではなく、保険適用もされていません。

そんななか、2023年4月21日順天堂大学にて、潰瘍性大腸炎の患者に対して日本で初めて便移植が行われました。(参考:NHKニュース

​​今回は血便や下痢などの症状がある30代の男性患者に、健康な人の腸内細菌を移植したとのこと。順天堂大学は、今後1年間で患者37人に対して腸内細菌の移植を行い、安全性や有効性を確認し、保険が適用される治療法としての承認を目指すとコメントしています。
今後、現在の薬物治療に加えて、便移植が潰瘍性大腸炎の主要な治療法として確立していくことが予想されるでしょう。

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植(FMT)」とは?

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
「便移植」と聞くと、「他人の便を自分の腸に入れるの?!」と嫌悪感を抱く方もいるでしょう。
実際には、腸内細菌のみを移植するため、他人の便をそのまま入れるわけではありません。
ここでは、便移植とはどのような治療かを解説します。

便移植で潰瘍性大腸炎が改善する仕組み

便移植は、健康な人の便から作成した腸内細菌叢溶液を、内視鏡により潰瘍性大腸炎患者さんの腸内に注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を再構築する治療です。

腸内細菌叢は、腸内フローラとも呼ばれます。
腸内には100兆から~1000兆個の細菌が住んでいて、種類や数には大きな個人差がみられます。
健康な人と潰瘍性大腸炎の人では、腸内フローラの構成がまったく異なることが研究で明らかになりました。
(参考:健康長寿ネット「腸内フローラ」

便移植は、薬物療法で潰瘍性大腸炎の方の腸内フローラを一度リセットし、健康な人の腸内フローラを移植することで、腸内環境を整えて辛い症状を改善しようという治療です。
順天堂大学が実施した研究では、患者17人のうち14人で症状が良くなり、そのうち6人が寛解しました。
アメリカではすでに行われていて、副作用が少なく治療効果が高い治療法として、注目されています。
潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
(画像引用:順天堂大学医学部附属順天堂病院消化器内科「潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植」

しかし、投与方法やドナー便の選択、投与回数などの具体的な方法についてはまだ確立できておらず、日本では導入が遅れている状況です。

米国では「便市場」なるものが存在

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
アメリカには、すでに病気の治療薬としての便が流通する「便市場」が存在します。
これは、便移植のための便が売れる時代が来ているということ。

米国のシンクタンクによると、6年後ぐらいには便移植や便由来の治療薬の市場は500億円ぐらいになるだろうと予想されています。

朝日新聞によると、ヨーロッパやアジアを加えると、大体1千億円ぐらいの市場規模になるとのこと。

日本でも、便移植が潰瘍性大腸炎の治療法として確立していくにあたり、便が売れるような場所ができてくるかもしれません。
(参考:朝日新聞「薬として売られる「便」 米国では移植のための市場も」

便移植の費用とは?

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
現在、日本では自費診療で便移植を受けることが可能です。
ここでは、日本での便移植の費用や実際の治療の流れをみていきましょう。

便移植の費用

便移植は先進医療であり、まだ保険適応外の治療法です。
そのため、治療費は高額になる傾向があります。

腸内細菌(叢)の移植 6回コース(移植6回)※税込価格価格 (税込)
移植処置1,562,000円
追加移植処置(7回目以降)110,000円
腸内細菌(叢)の移植 3回コース(移植3回)価格 (税込)
移植処置957,000円
追加移植処置(4・5・6回目以降)247,500円
追加移植処置(7回目以降)110,000円

(参考:腸内フローラ移植臨床研究会「腸内細菌(叢)移植の申し込み」

自由診療のため、多少病院によって費用差はありますが、6回移植を行うコースで160万円程度、3回移植を行うコースで96万円ほどの費用がかかります。
これに診察料や便移植前の検査代、薬物治療代もかかってくるため、実際にはもう少しお金がかかるでしょう。

回数の選択は、症状の強さや病歴、他の病気の有無によっても異なります。
便移植前の検査によって、回数や頻度などをオーダーメイドで決定し、治療を進めていきます。
回数によって治療費は大きく異なりますが、そもそもの治療費も高額なため、現状ではなかなか手が出しにくい治療と言えるでしょう。

便移植はどこで受けられる?

便移植は、東京や大阪などの都市部の大学病院、「腸内フローラ移植臨床研究会」に所属するクリニックを中心に受けることができます。

腸内フローラ移植臨床研究会とは、便移植の安全性と有効性を研究している機関です。
全国の臨床医、専門の研究所、ボランティアドナーバンク、大学と提携し、世界最高水準の便移植ができる環境を整える取り組みを行っています。

潰瘍性大腸炎の診察を行っているすべての病院で便移植が受けられるわけではないため、多くの場合は、便移植を受けるために他の病院を受診する必要があるでしょう。

便移植を受ける流れ

ここでは、便移植の治療を受ける流れを解説していきます。

1.診察

まずは、便移植がどのような治療なのかを、患者本人はもちろん家族も交えて説明を受けます。
便移植は前例が少なく、回数や頻度などが確立されていない病気です。副作用は少ない治療ではありますが、しっかりと説明を聞いておきましょう。

2.腸内フローラバランス検査

診察後は、「腸内フローラバランス検査」を受けます。
腸内フローラバランス検査とは、最新の遺伝⼦解析装置を⽤いて、便中に含まれる微⽣物を読み取り、腸内に生息する菌種を推定する検査です。

この腸内フローラバランス検査は、腸内環境に合わせた便移植の回数や頻度などを決定するために行います。

3.薬物投与

便移植をする前に、抗生物質を服用します。病院によっては行わないこともあるため、事前に確認しておきましょう。

4.ドナー選定

移植ができる状態になったら、ドナー選定を行います。
ドナーは健康な親族か患者本人が指定した知人、または国内で唯一⺠間が運営する、「腸内細菌(叢)の移植のためのドナーバンクJapanbiome」に所属するドナーの便を使用します。
ドナーバンクが利用できるかは病院によって異なるため、こちらも確認しておく必要があるでしょう。
移植前に検査を行い、移植しても問題がないかをチェックします。

5.便移植を行う

便意食を行う当日になったら、ドナーから健康な便を採取し、攪拌濾過した腸液を移植します。
投与方法は内視鏡やカテーテルなど、病院によってさまざまです。
事前に行った検査結果や病歴、症状などによって事前に決められた頻度や回数に沿って、何回か移植を繰り返します。
原則外来での治療となりますが、病院によっては入院も可能です。

6.再検査・経過観察

便移植は、通常1クールにつき3〜6回ほど移植を行う場合が多いです。
移植期間中や移植終了後は、定期的に検査をしながら経過を観察します。
腸内フローラバランスを確認するための再検査も行いますが、頻度や回数は病院によって異なりますので、こちらも合わせて確認しておきましょう。

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用まとめ

潰瘍性大腸炎の新治療「便移植」の費用とは?
潰瘍性大腸炎の新治療として注目を集めている「便移植」。
アメリカでは「便市場」なるものが存在し、便移植の普及が広がっています。
しかし、日本では2023年4月にやっと初めての便移植が行われたばかり。
保険適応の治療として承認を目指して安全性や有効性を確認できるよう研究が進められていますが、普及は海外と比較すると大きく遅れているのが現状です。

日本では現在、自由診療でのみ便移植を受けることができます。
1クールで3〜6回の移植を行うケースが多く、3回だと約96万円、6回だと約150万円ほどの治療費がかかります。
便移植は取り扱っている病院もまだまだ少なく治療費も高額なため、まだまだ挑戦しにくい治療法というのが現状です。

今後の研究で有効性や安全性が確認され、保険適応内での治療が可能になることが期待されます。