難病に指定されている「潰瘍性大腸炎」。
現在はまだ根本的な治療法が見つかっておらず、工夫をしながら上手く付き合っていくことが必要な病気です。
医療の進歩に伴ってさまざまな新薬が開発されている中で、2022年9月に「リンヴォック」という新薬が潰瘍性大腸炎の治療で承認されました。
本記事では、潰瘍性大腸炎の新薬「リンヴォック」について解説していきます。
潰瘍性大腸炎で治療を受けている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
潰瘍性大腸炎の新薬「リンヴォック」とは？
リンヴォックは、関節リウマチの治療薬として2020年1月に承認され、4月に発売が開始されました。2022年9月に中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法（既存治療で効果不十分な場合に限る）への効果で追加承認を取得。
潰瘍性大腸炎には、症状が強く出ている活動期と症状が治っている寛解期があります。潰瘍性大腸炎の治療は、寛解期をできるだけ長く保つように薬や食生活、生活習慣などを調整します。リンヴォックは、この寛解期への導入や維持に効果があるとされ、治療薬として処方されるようになりました。
（参考：リンヴォック）
炎症性の病気に処方される
リンヴォックは、潰瘍性大腸炎の他にもさまざまな病気の治療薬として処方されます。
リンヴォックが治療薬として承認されている病気はこちらです。（2023年6月現在）
- 関節リウマチ（関節の構造的損傷の防止を含む）
- 関節症性乾癬
- X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
- 強直性脊椎炎
- アトピー性皮膚炎注
どれも潰瘍性大腸炎と同じように、炎症性の疾患です。
幅広い疾患に効果を発揮する薬であることがわかるでしょう。
なぜリンヴォックは潰瘍性大腸炎に効果があるの？
潰瘍性大腸炎は、腸の中に炎症が起きることで腹痛や下痢、下血やそれに伴う嘔気や食欲不振など、さまざまな症状が起こります。人によって症状の重さは異なり、軽い人であれば普通の人と同じように生活ができる方も多いです。
潰瘍性大腸炎の原因は未だ解明されていませんが、体の炎症反応に関係している物質である「サイトカイン」が深く関わっていると考えられています。
通常サイトカインは、体に侵入してきたウイルスなどに反応し、免疫反応を刺激してウイルスによって感染が広まらないように働きます。
潰瘍性大腸炎では免疫に異常があり、体全体の免疫とは別に腸管だけ独自の免疫体系を作っていることが、順天堂大学の研究で明らかになりました。
そのため、別名「JAK阻害薬」とも呼ばれ、潰瘍性大腸炎の症状に関係しているとされる炎症性サイトカインが伝達されるのを防いでくれます。
それにより、腹痛や下痢といった症状を改善し、寛解期への導入や維持に効果が期待できると考えられています。
潰瘍性大腸炎でリンヴォックを内服する際の副作用や注意点は？
潰瘍性大腸炎の治療薬として注目されているリンヴォックですが、副作用や内服する際の注意点もあります。
ここでは、リンヴォックの注意点について解説します。
リンヴォックの副作用は？
重篤なものだと感染症や肝機能障害などがあるため、医師の指示通りに内服しながら、時には検査や診察も必要になります。
リンヴォックの重大な副作用はこちらです。
- 感染症［帯状疱疹（4.4%）、肺炎（1.2%）、結核（頻度不明）等の重篤な感染症（日和見感染症を含む）］
- 消化管穿孔（0.1%未満）
- 好中球減少（2.9%）
- リンパ球減少（1.4%）
- ヘモグロビン減少（0.5%）
- 肝機能障害［ALT上昇（2.9%）、AST上昇（2.3%）等］
- 間質性肺炎（頻度不明）
- 静脈血栓塞栓症［肺塞栓症（0.2%）及び深部静脈血栓症（0.1%未満）］
- 重篤な過敏症［アナフィラキシー（頻度不明）、血管浮腫（頻度不明）］
主な副作用としては、上気道感染が多く報告されています。咳や痰、喉の痛みなどの症状が出たら、副作用の可能性があります。早めに医師に相談しましょう。
中等症から重症の潰瘍性大腸炎のみ対象
リンヴォックは、潰瘍性大腸炎と診断されれば誰でも内服できるわけではありません。もちろん、医師の処方箋がないと内服することはできませんが、リンヴォックは原則「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法（既存治療で効果不十分な場合に限る）」が対象となっています。
軽度の潰瘍性大腸炎の方は処方できない可能性も考えられるため、注意が必要です。
潰瘍性大腸炎の方のリンヴォックの飲み方は？
リンヴォックの飲み方は症状の重さによって異なりますが、決められた量を1日1回内服する場合が多いです。
1番少ないもので7.5ｍg、1番多いもので45mgの錠剤があり、潰瘍性大腸炎で症状が強く出ている活動期の場合は、1番多い45ｍgが処方されることがほとんどです。
1サイクルを8週間とし、継続して内服し効果があるかを判断します。効果が不十分な場合は、さらに追加で8週間内服することが可能です。
45mgを内服して症状が落ち着き寛解期に入った場合は、15mgに量を減らして継続します。減らして症状が悪化してしまった場合は、30mgに増量も可能とのこと。
（参考：A-CONNECT「リンヴォック商品特性」）
これらは医師の判断になるため一概には言えませんが、現在潰瘍性大腸炎の症状が強く困っている方は、「リンヴォックを試してみたい」と相談してみても良いでしょう。
1日1錠飲むだけなので、続けやすいのも嬉しいですね。
潰瘍性大腸炎とリンヴォックのまとめ
潰瘍性大腸炎の治療薬として新たに承認された「リンヴォック」について紹介しました。
まだ原因や根本的な治療法が分かっていない潰瘍性大腸炎を患っている方は、不安を感じることも多いでしょう。
リンヴォックは、中等度から重度の潰瘍性大腸炎の方で、これまでの治療法では効果があまり得られなかった方が対象の薬です。
免疫や炎症と関係が深いサイトカインの伝達を防いでくれるため、潰瘍性大腸炎のつらい症状に効果が期待できます。
昨年承認されたばかりの薬ですが、取り扱いを始めた医療機関も増えてきています。潰瘍性大腸炎の症状で悩みを抱えている方は、ぜひ主治医に相談をしてみてくださいね。
