まだ少人数の試験結果で推奨とまでは言い切れませんが、IBDの症状を抑えると報告されているハーブがいくつかありますのでご紹介いたします。
はじめに重要な注意点ですがハーブは症状の緩和に補助的に使用するものです。現在の治療と置き換えられないことを十分に理解して使用しましょう。
炎症性腸疾患の植物療法
今回、参考にした文献は
2019年にイランのシャリーコード医療大学の医療植物研究センター”Mahmoud Rafieian-Kopaei”氏による「Phytotherapies in inflammatory bowel disease（炎症性腸疾患の植物療法）」という論文からです。（引用論文全文）
氏はGoogle Scholar、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、CINHALなどの論文電子データベースからIBDにおける生薬のエビデンスを確認しました。
主要な漢方薬について、文献を手検索することに加えて「IBD」の検索用語と「薬用植物」または「漢方薬」の検索用語を組み合わせて、生体内および生体外データを収集しました。
従来の治療法の副作用と許容される安全性により、IBDや他の疾患の管理のための薬草療法への関心が高まっています。
ハーブ療法は、組織学的損傷を軽減し、疾患活動性指標と臨床反応のレベルを高め、寛解を改善し、再発率を低下させ、便の一貫性を改善し、IBD患者の直腸出血を改善することが示されています。（文中より）
IBDに有効な具体的なハーブ
センシンレン（穿心蓮）
インド、スリランカ原生のハーブでサンビロートとも呼ばれます。
原産国の一つのジャワ島では現地の人は健胃薬として用いられています。
このハーブの研究では、クローン病患者さんが8週間使用することで炎症を示すC反応性タンパク質 (CRP) の値が優位に減少したと報告しています。また炎症反応を起こす多くのタンパク質を抑えることも示しています。
アロエベラ
アロエベラはアロエ属の多肉植物の一種です。
アロエベラの薬効について古くから知られており、多くの研究が行われています。
効能として怪我や火傷、糖尿病、高脂血症等に効果があると報告されています。
IBDの研究では潰瘍性大腸炎の患者さんに対して4週間試験が行われました。
その結果、症状の改善および数値の改善が見られたと報告されています。また炎症を起こす遺伝子を抑えることが示されており大腸炎の活動および進行を抑えたと複数の論文で示されています。
ウィートグラスジュース
ウィートグラスとは小麦の若葉を示します。それをジュースにしたものがウィートグラスジュースです。
デトックスジュースとして欧米で人気があります。
濃い緑で苦そうな見た目ですが、味覚の個人差はありますが少し甘みがあり飲みやすいとも言われています。
こちらは潰瘍性大腸炎の患者さんで4週間試験が行われ、直腸の出血や臨床数値の改善が報告されています。小麦の若葉に大量に含まれる抗酸化成分の効果で炎症が抑えられると考えられています。
インドオオバコの種
インド原産の薬草で種子に食物繊維が多く、便秘薬や健康食品に使われています。
別名としてサイリウムやイスパキュラと呼ばれることもあります。
特徴として、水溶性と可溶性の食物繊維をバランス良く含み、便秘や過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎の症状緩和に用いられます。
研究では潰瘍性大腸炎の患者さんに12週間使用してもらった結果、こちらも症状の改善が認められました。
注意すべき点として食物繊維を多く含むため摂取する際は十分な水分補給が必要となります。胃や腸に狭窄がある人は使用を避けるようにしましょう。
ターメリック
ターメリックは独特の香りとほろ苦い風味を持つ黄色いスパイスです。
主にカレーなどに使用する香辛料としてよく知られています。
このターメリックの成分クルクミンが潰瘍性大腸炎の再発を抑えると報告があります。試験は6ヶ月行われ、現在の治療にクルクミンをさらに追加することで再発確率が優位に減少し、さらに症状の所見の改善も見られたと述べられています。
植物療法のまとめ
他のハーブなどにも実験レベルで効能が見られるものが報告されてきております。
使用するときは現在の治療に補助的に使用しましょう。効果が現れるまで時間がかかったたりすることや症状に合わないときがあります。ご不安があれば主治医や薬剤師などに相談しましょう。
