炎症性腸疾患とは、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つがあります。どちらもはっきりとした原因は充分にわかっておりませんが、消化管に炎症を起こす慢性の病気です。
クローン病の小児の発症率は?
日本では、潰瘍性大腸炎の患者数は10万人以上、クローン病が3万人以上とされています。その中で、16歳以下で発症した患者さんの割合は、潰瘍性大腸炎で13%、クローン病で6%とされています。
特に、8歳以降に発症する小児患者が多い傾向にあります。
こどもの心に寄り添うこと
クローン病は、長く付き合っていかなければいけない病気です。
「特定疾患」にも指定されています。
口の潰瘍から肛門周辺の潰瘍まで、あらゆる部分に問題を起こしてしまう可能性があります。
腸の炎症が進むと、腸に穴が開いて内容物が漏れ出したり、腸が狭くなって腸閉塞を起こしたり、下痢や腹痛を繰り返し、トイレに行く回数も普通の子よりも多くなります。
病気がわかったとき
この病気がわかったとき、病気のことを子供に伝えたとき、本人がどのように受け止められるかは本人の年齢や性格、考え方によっても違います。
しかし、診断された病気が「特定疾患」であることの不安や、検査や通院への羞恥心や苦痛、ストレスなどはどの子供も抱えています。
身体的な苦痛だけでなく、心も気持ちもエネルギーが低下していることを十分に理解して、子供の気持ちに寄り添いましょう。
入院することになったとき
入院を聞かされた子供は、少なからず、みんなショックを受けます。
症状が安定せずに、一時的に入院する時にも、病院にいられる安心感とは裏腹に子供は不安やストレスを持っています。
制限された食事へのストレス、食べられないことへのストレスに加え、治療(内科的・外科的)への不安もあることでしょう。
また、副作用でむくみが出たり、抵抗力が低下したり、空腹感がつらく感じることもあるかもしれません。
たとえ入院中でも、クラスメートは待っていてくれていて、自分もクラスの一員であることを感じさせてあげてください。
不安や苦痛が多いときほど、安心やストレスの軽減を心がけましょう。
退院するとき
退院が近づくと、退院への喜びも出てきます。
しかし、それと同時に再燃への恐怖や学校生活の復帰が不安になってくることだと思います。
学校生活への復帰に対して、十分な受け入れ準備と不安解消を心がけましょう。
小学校や中学校に戻り、授業中や休み時間に腹痛やトイレの回数が多くなってきたら、家庭と学校、医療機関で連携がすぐに取れるようにしておきましょう。
また、病気のせいで、一人でいることが多くなりがちです。集団に入れなくなって孤立することがないように、友人にも病気のことを正しく理解してもらいましょう。
デリケートな病気なので、病名について一切触れてほしくないという保護者もいます。
病気に関することは、本人、保護者の気持ちをよく理解し、配慮してください。
学校生活について
クローン病の寛解期であっても、学校に登校するときには、子供はある程度の不安を抱えています。
「友達に何か言われたらどうしよう」、「着替えはどこでしょう」、「トイレはどうしよう」など、さまざまな不安要素を抱えて過ごしています。
周りのみんなが正しい理解をし、給食も食べられる時とそうでない時があること、みんなと同じように活動ができない時もあること、掃除も行事も参加できない時があることなどをきちんと周知しておきましょう。
子供同士で傷つくような言動をとることがないように配慮してください。
授業中について
授業中は、座席の配置に気を配る必要があります。トイレに行きやすい場所にして下さい。
クローン病の子供は、突然激しい便意に襲われることがよくあります。そのたびに、みんなの前でトイレの必要性を発言させるのは、屈辱的な思いをさせるばかりでなく、わずかな遅れで便失禁を招いてしまうかもしれません。
周囲の気を引かずに、素早くトイレに出られる環境を作ることが大切です。
また、人口肛門(ストーマ)を入れている場合は、肛門から音が漏れることがあります。そのため、教室内の席は真ん中ではないところが良いでしょう。
先生、クローン病のこと知って下さい
NPO法人「IBDネットワーク」から小中高校生の教職員の方に向けたクローン病の手引き冊子「先生、クローン病のこと知ってください。(リンク:PDFファイル)」があります。
学校の先生の中には、クローン病の名前も聞いたことがない人や、名前は知っていてもどういう症状か、どういった配慮がいるのか分からない方もおられます。
そういった教職員の方に向けた、クローン病とは?という分かりやすく解説し、学校全体の取り組みやクラスの取り組みも記載したPDFがフリーでダウンロードできます。
保護者の方はダウンロード・印刷して学校の担任の先生に渡してみてもいいかもしれません。
炎症性腸疾患は、普通の日常生活ができ、学校に行くことも、仕事に就くこともできます。炎症性疾患を患う子供たちが、少しでもストレスが少なく、楽しい学校生活が送れ、力強く育っていける優しい社会にしたいものです。