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潰瘍性大腸炎における大腸がんの早期発見に新しい検査!

潰瘍性大腸炎の大腸ガンリスク
2020年1月14日に三重大などの研究グループが潰瘍性大腸炎が原因で大腸がんになる可能性を簡単に検査する新しい方法を発表しました。

潰瘍性大腸炎は日本では原因がまだ詳しく分かっておらず、治療法も確立していない難病指定の疾患になります。

2020年現在、日本では約20万人が患者がいるとされています。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜が炎症を起こし、場合によっては潰瘍を引き起こます。

その結果、激しい腹痛や下痢・下血から体重減少、倦怠感などさまざまな体調不良になります。

上皮細胞は発がん過程で陰性に選択
潰瘍性大腸炎の慢性罹患で大腸がんの発症率が上がる!?2019年12月に京都大学医学部の小川誠司教授らが発表した最新研究から、「潰瘍性大腸炎の慢性疾患は大腸ガンの発症リスクが高まるか?」について考察しました。...

潰瘍性大腸炎の大腸ガンのリスク

慢性的な潰瘍性大腸炎で大腸の炎症が続くと、合併症として大腸がんのリスクが通常の約8倍になると言われています。

なぜ潰瘍性大腸炎が続くと大腸がんのリスクが高まるのか?

「大腸炎による酸化ストレスのために、大腸粘膜上皮細胞が損傷し、アポトーシス(細胞死)が促進されます。

これに対して残った粘膜細胞が分裂して再生しますが、この時にDNAが複製され、その頻度が高ければ高いほど突然変異が生じやすく、がん細胞が発生するリスクが高まります。

(「慢性炎症から癌が発生する(PDF)」北里大学医学部 岡安教授)

潰瘍性大腸炎患者に必要なサーベイランス

サーベイランスとは医療用語で、「継続して注意深く監視する」という意味です。

大腸がんリスク以外にも、上記の通り日常生活における不自由がないように、活動期と寛解期を繰り返す潰瘍性大腸炎に対しては定期的な病院での検査が必要不可欠になってきます。

今までは、定期的な通院での血液検査と年に約1回ペース(患者による)の内視鏡検査を行い、薬剤などの対処療法の配分や炎症の進行具合やガン化の有無を医師・患者ともに注意深く行ってきました。

内視鏡の体への負担

しかしながら内視鏡は患者にとって、前日からの食事制限(絶食)や当日のモビプレップなどの下剤で大腸の中をキレイにする必要があります。

また内視鏡自身も痛みを感じる方も多く、鎮痛剤や麻酔を利用する方も多いと思います。

最近ではカプセル内視鏡を利用される方もおられると思いますが、腸に狭窄がある場合はカプセルが途中で詰まる可能性があるので、使用することが出来ない場合もあります。

炎症を起こしていると内視鏡でも分別しにくいというリスクも。

内視鏡に変わる新しい検査方法!

今回、三重大などの研究チームが発表した検査方法は、こういった患者への体への負担がほとんどない上に、簡単に検査が行えて結果が分かるということで、かなり期待が高まります。

検査方法

検査方法はとてもシンプルです。

肛門近くの直腸という部位に専用の医療器具を使用しピンセットで1mmほどの粘膜を採取し、遺伝子解析すれば大腸がんリスクが判定できるということです。

2020年1月14日現在も発表はありましたが、検査効率の確認のため実用化には至っていませんが、だいぶん体への負担は減っているように思えます。

従来の数日前からの腸内を下剤できれいにしたり、内視鏡に麻酔をした場合は当日仕事を休んだり体がだるく家で休んだりすることも大幅に軽減されていくかもしれません。

簡単な検査でしたら今までに年に1回ほどだった検査も、2回3回と刻んで行うことも出来るので、発症タイミングのリスクも大幅に軽減されそうです。

問山裕二准教授のプロフィール

問山裕二准教授三重大学大学院HPより

今回発表が行われた三重大学大学院の研究グループのメンバーである問山准教授の名前がニュースにありましたので、大学ホームページを拝見しておりましたら「留学体験記」に2001年から潰瘍性大腸炎の遺伝子解析を行っている文章がありましたので、転載させていただきたいと思います。

私は2001年4月に三重大学大学院に入学し,潰瘍性大腸炎の上皮粘膜に特異的に高,低発現する遺伝子をMicroarrayにて網羅的に解析することで,この疾患の病因となる遺伝子の同定を行いました。(中略)

大学院を卒業後は,大腸癌の外科的治療(手術)の研鑽をつみながら,消化器癌(大腸癌,胃癌)の腫瘍組織中の遺伝子発現や治療前の血清中のサイトカインを用いて,治療後の患者の予後を規定するマーカー探索を行ってきました。

その頃,大腸癌,潰瘍性大腸炎の癌化のメカニズムはゲノムの変異のみではなく,環境や炎症により誘発されるエピゲノムの関与がかなりのウェイトを占めることが知られはじめ,このエピゲノムを用いた癌診断,癌治療方針の選別に関する研究に興味を持ちました。

(三重大学大学院医学系研究科HP「消化管・小児外科学に興味のある皆様へ-問山裕二『留学体験記』より

わたしたちが苦しんでいる間にも、病気と医療を見つめ、あきらめずに解を求め続けて結果を導いてくださる医師や研究チームには本当に感謝です。

さらなる朗報を期待しましょう。