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便移植がオーストラリアで承認!潰瘍性大腸炎にも効果が期待される治療法!

便移植という治療法が注目を集めています。
言葉の通り、健康な人の便を病気の人の腸に移植する治療法である便移植。
近年、腸内の環境が体全体の健康に影響を与えていることが分かっています。
今回は、今世界的に注目されている便移植について、最新の動きをみていきましょう。

便移植
便移植によるIBD治療と今後の展望便移植療法 (FMT: Fecal Microbiota Transplantation) という言葉をテレビなどのメディアやインターネ...

便移植ってどんな治療?


便移植とは、潰瘍性大腸炎など腸の病気の人に、健康な人の便を移植する治療法です。
人の便を移植することは、どのような効果があるのでしょうか。

便移植とは

便移植(FNT)は、腸内細菌叢移植とも呼ばれています。
腸内細菌叢は別名腸内フローラと言われ、人間にはひとりひとり異なるたくさんの腸内細菌がいます。
この腸内細菌は研究が進むにつれ、潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸の病気はもちろん、うつ病やアトピーなどにも影響していることが分かってきました。

そのため、健康な人の便、すなわち腸内細菌を病気の人の腸に移植することで、腸内環境を改善することができ、病気の治療につながるというのです。

どんな方法で移植するのか

治療のためとはいえ、他の人の便を自分の体に入れるなんて!と抵抗がある方も多いでしょう。
もちろん、採取した便の中にある腸内細菌叢を溶かした溶液を肛門から注入するため、人から採取した便をそのまま移植するわけではありません。
それまでの腸の病気の主流な治療は、抗炎症薬を使って起こっている炎症を抑えるというものでした。
しかし、病気の根本を解決しているわけではなく対症療法になってしまうため、どうしても再発することが多くありました。
便移植は、病気の根本となる腸内細菌を改善する治療であり、全世界で注目されています。

世界初!オーストラリアで便移植が承認された!

腸の病気以外にも、さまざまな病気の治療に役立つことが期待されている便移植。
そんな中オーストラリアでは、バイオバンクという企業が保健省薬品・医薬品行政局に便移植( FMT)の承認を受けたと報じられました。
(参考:Yahooニュース『世界で進む「糞便移植」が日本で普及していない理由』

今まで暫定的に行われていた便移植でしたが、承認を受けたということは医薬品と同等の効果が保証がされたことと同じです。
医師も処方がしやすくなり、今後便移植を受ける患者も増えていくでしょう。

すでにアメリカでも便移植は承認を受けている治療法で、アメリカ、オランダ、日本などでも、健康な人の便を集める「便バンク」が設立されています。

便バンクが設立されることで、治療が必要な人に安定的な腸内細菌叢の供給が可能です。
それだけ期待されている治療法と言えるでしょう。

しかし、オーストラリアやアメリカで便移植が承認されているのは、再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection: CDI)に対してのみです。
CDIというのは、抗菌薬を使用している患者に起こる腸炎で、下痢や腹痛などの症状を引き起こします。免疫力が低下している場合は、他の病気を併発し死に至ることもある怖い病気です。また、再発することも多く治療が難しいとされています。
(参考:NIID国立感染症研究所

アメリカで便移植がされ、便バンクが設立。
アメリカの最大の便バンクOpenBiomeでは、21年9月までに6万回の提供実績を達成しています。
便移植が急速に広がっているのがよく分かりますね。

日本でも広がりを見せる便移植


便移植は海外だけの話ではなく、日本でも承認こそまだですが自由診療での治療がスタートしています。
日本では海外ほどCDIが重症化しないこともあり、海外よりも普及が遅れているのが現実ですが、便バンクも設立され大学病院などでの治験も始まっています。

日本ではCDIよりも、潰瘍性大腸炎に対する治療として便移植が注目されています。
潰瘍性大腸炎は、腸の炎症によって下痢や腹痛を起こす病気で、安倍総理が罹患していたことでも有名です。

潰瘍性大腸炎に対する治療として、研究の結果便移植はとても有用であると期待されています。
潰瘍性大腸炎の治療としては、現在免疫抑制剤を使用するのが主流ですが、これは腎障害や神経障害など重篤な副作用を引き起こす場合があります。
一方で便移植での副作用は、吐き気やお腹の張りなどの軽度なものでした。
数ある腸内細菌のなかで有用な菌の特定も進んできており、今後の動きが気になりますね。

便移植が抱える問題点


たくさんの病気に対し有効な治療法であると期待されている便移植ですが、さまざまな問題を抱えているのも事実です。

ドナーの確保が難しい

まず、ドナーの確保が難しい点です。
日本では献血や骨髄バンクはよく聞かれると思いますが、便バンクというのを初めて聞いたという方も多いでしょう。
便バンクが普及していないということもありますが、「自分のうんちを預ける」というということ自体に抵抗があるという人もいます。

また、便バンクを使用しない場合は、ドナーとなる人は2親等以内、20歳以上の知人とされており、知っている人の便を自分の体に入れることに抵抗を感じる方もいるでしょう。(参考:藤田医科大学病院)

まだまだ治療として認知度が上がっていないこともあり、ドナーの確保が難しいというのは大きな課題です。

大腸内視鏡を使用するため患者の負担が大きい

現時点での便移植の方法は、攪拌した腸液を肛門から注入するというもの。
大腸内視鏡検査をしたことがある方なら想像ができると思いますが、お尻から注入するというのは、人によっては痛みを伴う場合があります。
また、治療を受ける際の恥ずかしさもあり、患者にとっては抵抗がある治療と言えるでしょう。

現在腸液の投与方法として、経口で行えるようなカプセルの開発が進んでいます。
口から服用して、腸に到達したところでカプセルが溶けるように設計することで、肛門から注入するのと同様の効果を得ることが可能です。
痛みや羞恥心を軽減できれば、治療のハードルも下げることができるため、今後の開発に期待が高まりますね。

便移植に関するまとめ

日本では、他人の便を自分の体に入れる治療法とあって抵抗を感じる方も多く、なかなか便移植が普及していないのが現実です。
まだ自由診療でしか便移植は受けることができないため、患者の負担が大きいのも事実。
日本で便移植を受けるのは、あまり現実的とは言えません。

しかし、潰瘍性大腸炎などの難病にも効果が期待されている便移植。
早くの日本での承認や、保険適応、便バンクの普及を願うばかりです。