Gut誌の2020年1月の記事によると、今回スウェーデンで8万人あまりを対象に行われた研究の結果が発表されました。
地中海式食事法を日常の食事にどの程度取り入れているかをアンケートで数値化し(数値が高いほど、地中海式食事の頻度が高い)、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患の発症率と数値との関係性を調べた研究です。
- 食事はクローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の発症と深く関係しているといわれています。
- 過去の研究で、食物線維の摂取がクローン病の発症リスク低下と関係していることが報告されています。
炎症性腸疾患と地中海式食事法の関係性
1997年から2017年にかけて、追跡調査を行い、164例のクローン病症例、395例の潰瘍性大腸炎症例を認めました。
地中海式食事法に関するアンケートの数値によって、8万人を4つのグループにわけて炎症性腸疾患の発症率を分析しました。
すると、数値が高いグループ、つまり地中海式食事法をより頻繁に実践しているグループでクローン病の発症率が低いことがわかりました。(ハザード比 0.42 P値 0.03)潰瘍性大腸炎に関しては、地中海式食事法の頻度と発症率に関して特に相関関係をみとめませんでした。
地中海式食事法は健康に良いと色々な研究で指摘されていますが、炎症性腸疾患への影響に関してはこれまで調査されたことがありませんでした。
この研究は、初めて地中海式食事法と炎症性腸疾患の影響を大規模なコホート研究で調査した研究として有意義であると発表されています。
(参考文献)2020Jan3.pii: gutjnl-2019-319505. doi: 10.1136/gutjnl-2019-319505.
地中海式食事法とは?
地中海式食事法は健康的な食事法として近年医学会からの注目を集めています。
スペイン、イタリア、ギリシャなど地中海に面した国々で行われている伝統的な食事法のことをさし、野菜、果実、魚介類、乳製品、オリーブオイルをバランスよく組み合わせた料理が特徴です。
近年、ダイエットやヘルシーフード(健康食品)としてアメリカでも非常に人気が高まり、日本でも少しづつ地中海式食事法の概念が輸入されつつあります。
地中海式食事法のピラミッド図
上の図はアメリカの非営利食品シンクタンクの「Oldways」とハーバード大学による地中海式食事法のピラミッド図です。
下層には野菜や穀物があり、その上に魚介などの海鮮、上に鶏や卵、チーズなどの動物性たんぱく質、そしてスイーツや赤身肉が上層にあります。
地中海式食事法のポイントになる食材
- オリーブオイル
- 乳製品(チーズ、ヨーグルト)
- 全粒穀物
- 野菜、果物
- 豆、ナッツ類
これらがポイントになる食材です。
最近は日本でもギリシャヨーグルトが人気だったり、全粒粉のパンやパスタが手に入るようになってきたので、日々の食生活に応用しやすくなってきていると言えるでしょう。
その他にも、精米した白米から玄米に変えたり、調理に使用する油をキャノーラオイルからオリーブオイルに変えたり、小さな工夫で地中海式食事法のエッセンスを取り入れることができます。
避けた方がよい食材
- 精製された穀物(白米や普通の食パン、パスタなど)
- 精製された砂糖
- 精製された食用油(キャノーラ油、菜種油、大豆油など)
- 加工肉(ハム、ソーセージなど)
これらの食品は避けた方が良いとされています。
完全に日常生活から排除してしまうのはストレスですし、経済的にも難しいと思いますので、食事の一つの目安として覚えておくといいと思います。