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抗酸化物質で潰瘍性大腸炎のリスク低下

レチノール

2021年7月愛媛大学が主導する全国52の医療機関が参加する多施設研究グループ「日本潰瘍性大腸炎研究」が、世界で初めてレチノール摂取が潰瘍性大腸炎に予防的であることを示し、学術誌「Nutrition」の電子版に公表されました。

愛媛大学大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授によると「栄養摂取による各種健康影響のエビデンスレベルはまだまだ低い状況です。とくに、日本人のエビデンスが乏しい状況です。欧米でエビデンスレベルが高い研究成果であっても、生活習慣、遺伝的な背景が異なる欧米人のエビデンスを日本人に適用してもいいのかどうかもわかりません。」とまだまだ日本人エビデンスの構築に力を入れていきたい状況を示しました。

レチノールとは?

潰瘍性大腸炎の予防に効果的と言われるレチノールとはいったいなんでしょうか?
レチノールとは”ビタミンA”の別名で、いわゆるビタミンの一種になります。
人間はビタミンを体の中で作ることができませんので食べ物から摂取しなければなりません。ビタミンはそういった有機化合物の総称です。

皮膚や美容においてレチノールはシミ・シワの予防としてアンチエイジングやエイジングエアの効果があると、その名前を聞いたかたも少なくないかもしれません。

レチノールは必須栄養素で皮膚細胞の分化を促進する[4]。ヒト血液中のビタミンAはほとんどがレチノールである。血中濃度は通常0.5 µg/ml程度で、0.3 µg/mlを切るとビタミンA欠乏症状を呈する。(wikipediaより)

日本潰瘍性大腸炎研究の研究結果

研究グループによると、平成27~29年度の間で全国52医療機関に通院されている潰瘍性大腸炎の患者384名を症例群・潰瘍性大腸炎ではない666名を対照群として、野菜、果物、抗酸化物質摂取と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を調べました。
野菜は緑黄色野菜とその他の野菜に分けました。抗酸化物質として、ビタミンC、ビタミンE、レチノール、αカロテン、βカロテン、クリプトキサンチンを評価しました。

(※愛媛大学HPプレスリリース参照



研究の結論

日本潰瘍性大腸炎研究日本潰瘍性大腸炎研究結果レポートより

結論としては

  1. その他の野菜を摂取すると潰瘍性大腸炎のリスクが低下した。
  2. ビタミンCの摂取により潰瘍性大腸炎のリスクが低下した。
  3. レチノールの摂取により潰瘍性大腸炎のリスクが低下した。
  4. 緑黄色野菜や果物の摂取に潰瘍性大腸炎のリスク低下の関連はなかった。
  5. ビタミンE・αカロテン・βカロテン・クリプトキサンチンの摂取に潰瘍性大腸炎のリスク低下の関連はなかった。

酸化ストレスと潰瘍性大腸炎の関連

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は遺伝的背景や環境要因などの多くの要素が複雑に絡み合って発症する多因子疾患として捉えられており、その確たる病因の解明には至ってはおりません。

しかしながら近年日本において(アジア全体においても)炎症性腸疾患の罹患率が急増した背景には、「低繊維・高タンパク質・高脂質」といった食の欧米化や食習慣の変化が本病になんらかの関連があるだろうと注目されてきました。

酸化ストレスと潰瘍性大腸炎の症状との関連も指摘されてはきておりましたが、今回の「日本潰瘍性大腸炎研究」グループの抗酸化物質摂取と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を調べた疫学研究成果はまだまだ世界的にも少ない状況です。

酸化ストレスとは?

ここでの酸化ストレスとは「酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用」のことです。

私たちは食べ物を食べることにより糖質や脂質・たんぱく質などの栄養素をからだの中に吸収しています。取り込んだ栄養素からエネルギーをつくるために「栄養素を燃やす」、すなわち”酸化”が必要なのです。

酸化は体の中の全体で起こっているため、酸化することにより細胞が傷つけられることがあります。これが「酸化ストレス」です。

発生した酸化ストレスに対し、抗酸化能(活性酸素を除去する能力)が追い付かない状況になると酸化ストレスが蓄積さえることになります。

これら酸化物の蓄積が様々な転写因子やリン酸化シグナル経路に影響を及ぼすことによって生体の炎症反応を惹起している2)。事実、抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼを欠損したマウスでは腸炎を自然発症することが報告されている。一方で、遺伝子改変技術を用いて活性酸素除去酵素であるスーパーオキシドディスムターゼを高発現させたマウスでは大腸炎の症状が軽微となる。
(一般財団法人食品分析開発センターSUNATEC:石川県立大学 東村泰希准教授の記事より)

抗酸化物質で潰瘍性大腸炎のリスク低下のまとめ

今回の研究成果は酸化物質の摂取とUCリスク低下の関連を調べた大きな前進です。

しかしながら「日本人の食事によるUCリスクのエビデンスはまだまだ低い状況」と愛媛大学の三宅教授は言います。
ビタミンAやビタミンCの接種がリスク低下に寄与することは成果として明らかになってはきたので、やはり炎症性腸疾患の方は普段の食事から気を付けていくべきですね。