ご存知サウナというのは、「蒸し風呂」という入浴方法のひとつで、フィンランドという国が発祥の地とされ日本では1964年の東京オリンピック以降に普及されたと言われています。
通常ではサウナの蒸し風呂内の室内温度は80度以上となり、サウナに入ると汗をかきやすく健康に効果が期待できて、かつクローン病の症状が良くなりそうなイメージがありますよね。
そもそもクローン病でもサウナに入っていいの?
実際に、サウナは心身ともに良好にコンディショニングしてくれますし、クローン病患者さんでも日頃の仕事や日々の生活におけるあらゆるパフォーマンスを上げるのに最適な健康法だと信じている人も少なからずいらっしゃるかと存じます。
サウナにはいわゆる『温熱効果』と呼ばれるエフェクトがあり、体が温まることがその最大のメリットであり、サウナの健康効果として有名なのが、温熱による血管拡張による血流の改善効果であることはもうすでに良く知られていることです。
クローン病を患っていても、よほど普段より体調が悪かったり症状が再燃して全身状態不良になる時期を除いてサウナに入浴することは基本的には出来ます。
但し、現実的にサウナに入るうえでの注意点を十分に認識してクローン病の病勢が不安定にならないように楽しく安全に入ることが重要です。
【追記】温泉入浴が腸疾患に効果あり
2021年12月15日、温泉による免疫効果を大分県の別府市と共同研究している九州大学が「温泉への入浴は痛風や過敏性腸症候群や肝臓病など特定の病気のリスクを下げる効果がある」との中間報告を発表しました。
今まで効用として「胃腸の弱い方」などの記載がありましたが、エビデンスが得られ始めたので積極的に入浴は意識したいですね。
詳しい情報は別のページに記載しています。
なかなか温泉に行けない方は、おうちで温泉気分を味わってください。
サウナがクローン病にどのような影響を与えるのか?
サウナに入ると全身の皮膚表面が熱い空気によって温められてその影響ですくなからず皮膚血流が増加し、その結果として相対的に消化管を含む内臓に分布する血液量が代償して減少することになります。
サウナに入ることによって血液の分布が皮膚により多く移行してしまうと、そのぶん胃腸に十分な血液が行き渡らなくなり、結果として消化不良を起こすなどの人体への悪影響を及ぼす可能性があるので消化状態が通常よりも悪い傾向にあるクローン病の方では特段の注意が必要なのです。
これらのことから、クローン病の方ではできれば食事の前後2~3時間程度はサウナ入浴を避けた方が無難であることは容易に理解できますね。
サウナに1回入ると、その結果として500ミリリットル以上の水分が体から奪われることになりますので、計算上も十分な水分補給が必要になりますが、もし万が一クローン病の患者様がサウナ入浴時に水分を補給せずに脱水のまま放置しておくと、全身の血液の流れが悪くなりいわゆる熱中症になってしまうのみならず、血液の粘り気が出て血の塊(血栓と呼ばれるもの)ができやすくなり大変危険であると考えられます。
このような命に直結してしまう疾患を予防するために、サウナ上がりにはある程度休憩の時間を設けて、十分に水分を補給して血液の流れを良くして血栓を作らないようにしておくことが健常人においても必要ですし、クローン病の方一人ひとりが出来るならば入浴前にも予めコップ1〜2杯の水分を補給するように普段から意識付けしておくことを強くおすすめ致します。
医学的にも血液の流れはまさに人間にとっては生命にとって欠かすことのできないライフラインと言え、命を成り立たせる大事な機能です。
サウナに入浴して体が温まって全身の血管が拡がることで、貧血で循環動態が不調になりがちなクローン病患者さんの血液の巡りがとても良くなり免疫力が高まるのみならず、原理的に疲労回復につながり腹部症状の悪化を予防できたり、本疾患の合併症における症状緩和に繋がるというわけなのです。
医者が教えるサウナの教科書(Amazon)
医者が教えるサウナの教科書 Amazonからこんな本が出ています。初心者でも読みやすくサラっと読めるのでオススメです。エビデンスなども含めて解説しているのでなるほどとなりますね。 |
クローン病の人でもこんな時はサウナに入るのを控えよう
その時々の判断にはなると思いますが、クローン病を罹患している方にとっていつもと比べて自分の体調が悪い時や健康状態が心配になっている際にはサウナに入浴するのを一旦見送ってやめておいたほうがいいこともあるでしょうね。
せっかくわざわざサウナで普段の疲れから解放されてリフレッシュしたいと思っていたとしても、かえって予期せずにクローン病の病状を崩すような極めて残念なことがあっては誰しもが容易く分かる通りに元も子もないですよね。
他にも、クローン病の中で下痢がひどく血便が悪化して重篤な貧血状態に陥っている場合や疾患活動期において治療薬剤が相性悪く副作用が前面に出ているようなケースでは、サウナ自体が原疾患を悪化させてしまう恐れが十分にあるために、あらかじめ主治医の先生にサウナ入浴の可否について確認しておくとなお一層良いでしょう。