治療法

クローン病や潰瘍性大腸炎患者の血液検査の結果の見方と新しい血清マーカー (LRG)

血液検査と血清マーカー

クローン病や潰瘍性大腸炎のIBDの定期検査では、主に血液検査や便検査、胃カメラ、大腸カメラ、CT/MRI検査などが行われます。

これらの結果の客観的な判断と患者さんの主観的な意見を合わせて医師は状態治療方針を決めます。

実際に血液検査の検査結果を教えてもらったり、また見たりしたとき、その結果が何を表すか理解できている患者さんは、意外と少ないのではないでしょうか。

今回は代表的な血液検査の意義と、今後実施される可能性がある新しい潰瘍性大腸炎とクローン病のIBDのマーカーについて解説いたします。

クローン病と潰瘍性大腸炎の血液検査結果からわかる4つのこと

貧血RBC赤血球数
Hbヘモグロビン
栄養状態TC総コレステロール
TP総タンパク質
Albアルブミン
ChEコリンエステラーゼ
炎症CRPC反応性たんぱく質
WBC白血球数
Plt血小板数
ESR血沈
薬の副作用や合併症AST、ALT、LDH、γGTP、ALP肝機能
UN、Cr腎機能
Amy膵酵素

貧血症状

貧血は、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン (Hb) の数値などで判断します。

赤血球は、ヘモグロビンに酸素結合させて全身に酸素を運びます。

IBDでは、主に出血や鉄分の吸収が悪いと減少しますので、症状の悪化を示す指標の1つになります。

またビタミンB12の吸収不良でもHbの数値が減少します。

女性の場合は月経の影響もありますので必ずしも症状と一致しないこともあります。

赤血球数やヘモグロビンの数値が悪化するとめまいや立ちくらみなどの症状が現れます。

栄養状態

栄養状態は、総コレステロール (TC)、総タンパク質 (TP)、アルブミン (Alb)、コリンエステラーゼ (ChE) などで判断します。

これらの数値は、栄養不足で悪化します。

クローン病や潰瘍性大腸炎の症状の悪化による栄養の吸収不良、または食事を十分に取れていない可能性がわかります。

炎症の程度

C反応性タンパク質 (CRP)、白血球数 (WBC)、血小板数 (Plt)、血沈 (ESR) は、炎症を示す数値です。

IBDの症状が悪化し炎症が見られると数値が悪化します。

他に風邪をひいたりすることでも数値は悪化します。

また免疫を抑える薬が効き過ぎて数値が下がりすぎることもあります。

薬の副作用や合併症

肝機能 (AST、ALT、LDH、γGTP、ALP)、腎機能 (UN、Cr)、膵酵素 (Amy) これらの数値は、肝臓や腎臓、膵臓に負担がでていないかを示しています。

服用している薬は肝臓や腎臓で代謝 (分解や排泄) されます。

自分の体にその薬が合っておらず体に障害があるとこれらの数値が上がってきます。

肝機能の数値は飲酒、腎機能の数値はタンパク質の多い食事や水分摂取が少ないと上がることもあります。


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LRG血清マーカー

新しい血清マーカー (LRG)

クローン病や潰瘍性大腸炎の炎症の度合いはCRPの数値から推測しますが、必ずしも炎症の状況と一致しないことがあります。

よってIBDでは血液検査だけでは症状を把握するのが難しいため、内視鏡を用いた大腸カメラなどでさらに検査をする必要があります。

しかし、最近になり新しい血清マーカーが見つかりました。

ロイシンリッチα2グリコプロテイン (LRG) は、炎症部位から作られるタンパク質で、血液検査ですぐに結果が分かります。

LRGは血液検査の結果をよく反映するのでこれからは、不必要に大腸検査をする必要がなくなるかもしれません。

内視鏡の大腸カメラは専門の病院でなければできませんし、痛みや不快感を伴うことが多く、検査自体がIBDの症状を悪化させるリスクにもなりますので、こちらの方法が広まることはクローン病患者さんと潰瘍性大腸炎患者さんにとって朗報になるのではないでしょうか。

現在 (2020年2月) は保険適応の準備段階のようです。これから徐々に広がって可能性があります。