クローン病のはっきりとした原因はまだわかっていません。しかし、ある種の過剰な免疫反応が関与しています。
そのために、過剰に反応している免疫反応を抑えることで、クローン病の治療に繋がります。
免疫抑制剤とはどのような薬?
免疫抑制剤とは、過剰な免疫反応を抑えることによって効果が得られる薬です。
そのため、白血球の働き抑えることで炎症を改善するのが「免疫抑制剤」です。
新しく白血球を作る時には、DNAを合成しなければなりません。DNAにはすべての情報が含まれているため、DNAを複製することが出来なければ、新しい細胞が作れません。
そのDNAを合成するための材料として、アデニンやグアニンという物質があります。アデニンやグアニンのDNAの原料を少なくすれば、DNAは作られなくなるという考え方です。
アデニンやグアニンを合成するために、「IMPデヒドロゲナーゼ」という酵素があります。その酵素を阻害するのが6-MP(6-メルカプトプリン)です。
つまり、DNAの原料を合成するために必要な酵素を阻害すれば、新しい細胞は作られなくなります。そうすると、白血球の合成が抑えられて、炎症も抑制されるという仕組みです。
なぜクローン病に免疫抑制剤が使われるの?
免疫が反応すると、炎症が引き起こされます。風邪などを引いて熱が上がるのも、免疫が反応して体に炎症が起こっているからです。
感染症などから身を守るためにも、免疫はとても重要です。しかし、過剰に反応し過ぎてしまうと病気に陥ることもあります。
免疫が過剰に反応し、自分自身を攻撃してしまうことがありますが、全身の消化管を攻撃してしまうのがクローン病です。
クローン病の炎症を抑えるためには、ステロイドが使用されます。
しかし、ステロイドは効果も強いですが副作用も多い薬剤です。
そこで、AZA(アザチオプリン)などの免疫抑制剤と組み合わせることで、ステロイドの量を減らしながら安全に治療をすることができます。
AZA、6-MPとはどのような薬?
AZA(アザチオプリン)は体内で速やかに分解されて6-MP(6-メルカプトプリン)になります。そのため、本質的には同じ薬です。
AZA(アザチオプリン)はプロドラックであり、体内に入って6-MP(6-メルカプトプリン)に変換されると、6-MPがIMPデヒドロゲナーゼという酵素を阻害して治療効果を発揮します。
このように、新たに白血球が作られる過程を阻害することで、免疫抑制作用を示す薬剤がAZA(アザチオプリン)です。
これらの薬剤は、活動期のクローン病を寛解に導く効果があります。また、寛解を維持し、ステロイドの使用量を減らす効果もあります。
免疫抑制剤の副作用はどのようなものがあるの?
これらの薬剤は、感染症にかかりやすくならない程度の量に調節して使用されます。
しかし、それでも感染症の危険性の増加を考慮しなければなりません。
これらの薬は、高い効果がありますが白血球以外の細胞にも作用してしまうため、他の臓器にも注意しなければなりません。
骨髄障害のよる血球の減少(血秋障害)や、悪性リンパ腫、肝障害、肺炎、などの重度の副作用の他にも、下痢、悪心、嘔吐や脱毛などの副作用が起こる場合もあります。
このような副作用のために、免疫抑制剤を使用できない患者さんは約2割いると言われています。
これらの副作用をチェックするために、免疫抑制剤を服用している患者さんは、定期的な血液検査が必要となります。
クローン病での免疫抑制剤は、比較的長く使われることが多いです。しかし、どのくらいの期間使えばやめてもいいのかははっきりと決められていません。
数年は継続しても問題ないと言われていますが、使用する期間は、症状に応じて主治医とよく相談してください。