治療法

クローン病とレミケード

レミケード

クローン病は、薬物療法と食事療法を組み合わせて症状のない状態を維持することが目的です。

薬剤では、ステロイド剤、免疫抑制剤、5-アミノサリチル酸製剤、チオプリン製剤などを組み合わせていましたが、寛解に至ることは難しいとされていました。

しかし近年では、病気の原因となっている物質の特定や、その物質を阻害する薬の開発が進んでいます。最先端のバイオテクノロジーを用いて作られた「生物学的製剤」と呼ばれる薬剤の登場で、クローン病の治療は大きく変わりました。

今までの治療薬に加え、生物学的薬剤を上手く使うことで慢性に炎症をコントロールすることができ、多くの患者さんが日常生活を取り戻すことが出来るようになりました。

今回は、クローン病で使用される生物学的製剤の中の一つの「レミケード」(成分名:インフリキマシブ)という薬剤についてご紹介させていただきます。

レミケードの有用性について

レミケード

私たちの体で炎症反応が起こるのには、免疫反応が関わっています。免疫細胞が炎症を起こすためには、どこかが炎症反応を起こすようにサインを出すのですが、サインを出す一因の中に、サイトカインという細胞間相互作用に関与して、周囲の細胞に影響を与える物質があります。

クローン病の患者さんの場合、腸管内でTNF-αという炎症や免疫反応に関係しているサイトカインが大量に作られています。大量のTNF-αはさらに炎症を引き起こしてしまう悪循環を作ってしまいます。

この連鎖を抑えるために、TNF-αの働きを阻害する抗TNF-α抗体である「レミケード」という薬剤が開発されました。

活動期の病変や肛門部位の病変、痔瘻にも効果があると考えられています。

レミケードは抗体なので、TNF-αに結合することができます。そのため、結合してTNF-αの働きを抑えることができます。また、受容体からTNF-αを引きはがす作用があります。既にTNF-αが受容体に結合している場合でも、そこから解離させることが出来るので炎症反応を抑制できます。

さらに、TNF-αを作り出す細胞を破壊する作用もあります。破壊することで、TNF-αがそれ以上作られなくなります。

これらの作用によって新しくTNF-αが活動できないように阻害することで、強力に炎症を抑えることができる薬剤です。

大きな分子なので投与方法は内服ではなく、点滴です。

活動期のクローン病の患者さんに対しては、2~3時間かけて点滴静注により投与します。入院の必要はなく、外来で施行できます。

レミケード

外瘻を有するクローン病患者さんに対しては、初回、2週間後、6週間後の合計3回の点滴静注を行います。それ以降は、8週間間隔で投与を継続することがあるので、主治医との相談になります。

レミケードの効果発現はとても迅速で、2週間後には炎症所見の軽減や症状の改善が見られ、数週間持続します。

レミケードの注意点

しかし、いくつか注意点もあります。

レミケードを投与する2カ月前から結核感染の確認が必要です。

レミケードの副作用として、免疫抑制作用による結核感染症の顕著化、敗血症や肺炎などの感染症、肝障害、発疹、白血球減少などが報告されています。

また、投与終了後2時間以内に出現する投与反応にも気を付ける必要があります。アナフィラキシー様症状などの重篤な場合は投与を中止する必要があるので、それらの症状に対する処置が可能な環境で点滴投与が行われます。

レミケードまとめ

レミケードの開発により、クローン病に対する治療が劇的に変わりました。また、レミケードの維持療法が平成19年11月に効能追加になったことで、いままでの治療法では効果が乏しかった患者さんにも十分な効果が期待できるようになりました。

今後、他にもターゲットを絞った生物学的製剤の開発や病態の解明に期待しましょう。