治療法

クローン病とステロイド薬

クローン病とステロイド

クローン病でも、炎症を抑えるためにステロイド薬が使用されることがあります。

主に、活動期に炎症を落ち着かせ、寛解を導入する効果に優れています。

症状がある程度強い中等度以上の患者さんや、他の薬の効果が得られない場合は軽症の患者さんにも使われます。

クローン病にステロイド薬を使用する際に、長期にわたって再燃を予防する効果はありません。症状が良くなってきたら、少しずつ使用量を減らして、最終的には中止します。

ステロイドとは?

ステロイドとは、動物や植物が自分の体の中で作り出しているホルモンです。

ステロイドには種類があり、「副腎皮質ステロイド」「アナボリックステロイド」「性ホルモン」がありますが、医薬品として使用されているのは「副腎皮質ステロイド」です。天然の副腎皮質ステロイドは、腎臓の上にある2個の副腎から分泌されます。

体内から取り出したステロイドではすぐに分解されてしまうため、人工的に合成されたものが医薬品として用いられています。

ステロイド薬は、もともと人の体に備わっている仕組みを利用して、病気を改善しているのです。ステロイド薬は、医薬品として劇的に炎症を抑える効果を持ち、人工的に作られたステロイドです。

ステロイドの効果

ステロイド薬は、強力に炎症を鎮める働きがあります。

また、免疫反応を抑制する働きも持ちます。ステロイドの効果は一般的に投与後2時間程度で十分な血中濃度になり、1日~2日後には炎症の改善をもたらします。

抗炎症作用と免疫抑制作用は、使用する量と関係しています。

ステロイドの安全性

テロイド薬を短期間使用することは、特に問題はなく安全性は高いです。

治療初期には十分な量を使用し、症状の改善や他の療法の効果を併せながら使用量を減らしていけば、副作用を怖がる必要はありません。

ステロイドの副作用

ステロイドの副作用

ステロイド薬の副作用は、使用量と使用期間に依存します。

ステロイドは、外部から供給されると、体が次第にそれに慣れてしまいます。血液中に十分なステロイドホルモンがあることで、脳が副腎にステロイドを分泌させる指示を出さなくなってしまうのです。

2~3週間続けると依存性が生じてきます。すると、副腎の本来の能力が低下し、副腎がだんだん萎縮してきます。

一旦低下してしまった副腎の機能はステロイドを中止してもすぐには回復しないので、ステロイド薬を止める際には、副腎に負担がかからないように少しずつ量を減らす必要があります。

内服の場合

内服薬の場合は、服用することで全身を巡り、ステロイドを必要としていない臓器にまで影響してしまいます。特に、長期間にわたる使用で副作用が問題となります。

免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、骨粗鬆症などが懸念されますが、最も心配なのが血糖値の上昇です。

ステロイドは体の糖代謝に影響します。

肝臓における糖新生(ブドウ糖を作ること)を亢進させて、ブドウ糖を放出させます。

さらに、筋組織や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを抑制してしまう作用や、インスリンの分泌抑制作用もあるので、高血糖になってしまうことがあります。

その他の副作用として、不眠、ステロイド筋症、血圧上昇、ムーンフェイス(顔が赤くなり、浮腫む)、多汗、生理不順、ステロイド白内障、緑内障、食欲不振、食欲増進などがあります。

外用の場合

外用で使用する場合は、皮膚の炎症や傷などに劇的な効果を発揮し、すぐに炎症を抑えて新しい皮膚が再生するのを助けます。

外用の場合、全身性の副作用の心配はありません。

外用で懸念される副作用は、皮膚の萎縮、皮膚が薄くなる、毛細血管が広がって肌が赤くなることです。

まとめ

ステロイド薬を必要以上に怖がる必要はありません。

ステロイドと聞いただけで、使用を嫌がる患者さんがいますが、その劇的な臨床効果やQOLの改善効果は現在の医療に不可欠です。

不安や心配があれば、医師や薬剤師と相談し、適切な使用量と試用期間を確認し、上手に使用しましょう。