治療法

クローン病治療で生物学的製剤を試す6つの理由

クローン病で生物学的製剤を使う理由

あなたが初めてクローン病の診断をされたとき、医師から生物学的製剤での治療の説明を受けたかもしれない。

私自身、ステロイドや食事制限などの治療についても説明を受けたが、レミケードの治療が病院としてはスタンダードだという説明から、クローン病との長い付き合いが始まった。

しかしながら当時は、自分が少しお尻(痔)が痛いだけで健康であることを疑っていなかったので、隔週で化学療法を点滴で受けることに対してかなりの抵抗を感じた
ヒミュラの選択肢も与えられたが、自分で自分自身に注射をすることはそれ以上に抵抗があった。

その後私は一旦ステロイドという、ただ「耳馴染みがあった」という理由だけでステロイド治療をはじめていくのだが、結局今はレミケードのお世話になっている。
そして当時の自分に伝えれるならば、初めからレミケードを受け入れることをすすめたい。

生物学的製剤をすすめる6つの理由がここにある。

1.今までのクローン病治療で緩和しきれていない

レミケードやヒミュラ、ステラーラといった生物学的製剤が登場するまでのクローン病治療の選択肢としてはステロイドや免疫抑制剤がメインであった。
これらも間違いなく効果は確かにあったのだが再燃のリスクは拭えないでいた。

アメリカのメリーランド州にあるACG(消化器内科専門のアメリカの大学)のガイドラインによるとクローン病の症状が中等から重度の場合、またはステロイドや免疫抑制剤に耐性がある場合には、強く生物学的製剤を勧めている。

2.最新の治療では「まず生物学的製剤」から

従来のクローン病の治療計画には、「ステップアップ」式の段階的なアプローチの手法が取られていた。
ステロイドのような安価な薬が最初に試され、より高価な生物製剤が最後に試される、といったように。

しかしながら最近では、新たにクローン病と診断された患者への生物学的治療で成功したエビデンス実績が共有されてきたため、いわゆる「トップダウン」式のアプローチに移り変わりつつある。

たとえばある研究では、クローン病に対する治療の初期段階で生物学的製剤を投与すると、投薬に対する反応が改善されることが分かった。
抗TNF生物製剤を早期に開始した研究グループは、再燃を治療するためにステロイドを必要とする割合が他研究グループと比べて低かった。またクローン病から併発する手術も少なかった。

3.瘻孔を引き起こすリスクを減らす

瘻孔とは炎症によって体の中と外、あるいは臓器間に穴があく状態のことを言う。

クローン病では腸管同士、腸管と膀胱で瘻孔(穴)が開いてしまうことがある。

瘻孔が出来ると命が危険な状態になる場合がある。腸の瘻孔でも腸管切除の手術が必要になる。

TNF阻害剤として知られている生物学的製剤は、瘻孔がある場合、非常に効果的であるため、医師によって処方される場合がある。

アメリカ食品医薬局(FDA)は瘻孔を形成するクローン病を治療し、瘻孔の閉鎖を維持するための生物学的製剤を承認している。

4.クローン病の寛解を維持したい

コルチコステロイドは寛解をもたらすことが知られているが、その寛解を維持することはできない。

ステロイドを3か月以上服用している場合、医師が生物学的製剤を開始する場合がある。

臨床研究では、抗TNF生物製剤が中等から重度のクローン病の患者の寛解を維持できることを示している。

ACG(消化器内科専門のアメリカの大学)は、生物学的製剤が副作用よりも寛解メリットが大きいと示唆した。

5.投薬頻度が抑えられる

生物学的製剤は、経口ステロイドのように毎日服用が必要なものではなく半月に一度、もしくはひと月~2か月に1度のペースで良い。
(※投与の間隔は、処方する医師・薬剤師の指示に基づき確認してください。)

ヒミュラの場合二週間ごとに自己注射をするだけで寛解が維持される。

自己注射と聞けば、かなり抵抗があり別の選択を考えてしまうのだが、皮下注射で針は細くペン型注射器と言って注射針が見えないタイプなども出ているので、注射の痛みもあまり感じないまま自己注射が出来るようになってきている。

6.生物学的製剤はステロイドよりも副作用が少ない

プレドニゾンやブデソニドなどのクローン病の治療に使用されるコルチコステロイドは、免疫系全体を抑制することによって機能する。

一方、生物製剤はクローン病の炎症に関連していることがすでに証明されている免疫系の特定のタンパク質を標的とすることにより機能する。なのでステロイドよりも副作用が少ないと言える。

実際のところは、ほとんどすべての薬には副作用のリスクがある。
生物製剤においては、副作用と呼べるものは、それらの投与方法に起因する。注射部位に軽度の刺激、発赤、痛み、または副反応が見られる場合がある。

感染症のリスクも一般的なリスクと比べると高くはなるが、ステロイドなどの他の薬ほどリスクは高くはない。

生物学的製剤に抵抗のあるとしたら

冒頭でも話をしたとおり、クローン病の診断を受けてすぐ生物学的製剤の治療を勧められて抵抗がある気持ちも分かる。
だからと言って自分で調べもせず、ただなんとなく嫌だという理由で生物製剤の治療を避けようとはしないでほしい。

あくまでステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤のメリットとデメリットを理解してから判断してもらえれば、と思う。

ちなみにクローン病の最初の生物学的製剤は1998年に承認されており、それから20数年にわたり世界のクローン病患者において臨床的な実績と安全性を確認してきている。

レミケードやヒミュラといった生物学的治療は「強すぎる」薬で、なおかつ治療費も高いと思っている人もいるだろう。

確かに生物学的製剤の薬剤単価は非常に高い、レミケードは病院で点滴投与してもらうと20万を超えてくるだろう。
もちろん健康保険の制度で3割負担な上に、おそらくクローン病の難病申請をしているはずなので、上限費として1~2万円で済むはずである。

「効きすぎる」というイメージに関しては上述のとおり、「免疫系の特定のタンパク質を標的」としているため非常に効果的であることは間違いない。

生物学的製剤の種類

生物学的製剤があらわれる前は、クローン病が重症化した場合、手術以外に治療の選択肢はほとんどなかった。

現在において生物学的医薬品がクローン病やその他の自己免疫疾患の治療の方法を劇的に変えた。
さらに生物学的製剤に関する研究は成長を続けており、将来さらに多くの選択肢が増える可能性がある。

  • アダリムマブ(ヒュミラ、免除)
  • セルトリズマブペゴル(Cimzia)
  • インフリキシマブ(レミケード、レムシマ、インフレクトラ)
  • ナタリズマブ(タイサブリ)
  • ウステキヌマブ(ステララ)
  • ヴェドリズマブ(Entyvio)

怪しい勧誘のようになってしまったが、少しでも今の治療の効果に疑問があれば、担当医に生物学的製剤での治療を相談してみると良いだろう。