IBDの主な症状として食後に下痢や腹痛を起こします。症状が長期化することで栄養障害により体重の減少がみられます。
まだ病気の原因は完全には明らかになっていませんが食事の内容で症状が緩和することが分かっております。
クローン病では口腔から肛門まで非連続的に炎症が潰瘍性大腸炎では主に小腸から大腸までの特定の部位で炎症がみられます。
炎症部位により食べ物の消化や吸収また水分がうまく吸収できなくなることがあります。
特に症状を悪化させる原因になるのが脂肪とタンパク質です。
注意したい栄養成分
①脂質
食事からとった脂肪分は、お腹の動きを活発にして下痢になりやすくします。他にもお腹の中の炎症を起こしやすくしてします。
症状が良くなってもまた症状が悪化する再燃は脂肪分が少ない食事の方が少ないことが分かっており、平均的な人がとる1日量の40 gでは再燃率が63%で30 gでは57%、10 gでは10%まで減少することが分かっています。
また油の種類も重要です。油の中で炎症を抑えることが知られているオメガ3脂肪酸を積極的に選ぶようにしましょう。
オメガ3脂肪酸はエゴマ油やシソ油、魚に多く含まれています。しかし、油には変わらないのでとり過ぎないようにしましょう。
②タンパク質
食事でとったタンパク質は、胃や腸で細かく分解された後に吸収されます。
しかし、炎症が生じるとうまく分解できずに運ばれてしまいます。分解されずに運ばれたタンパク質を体が病原体と間違えて認識することがあります。
その結果、そのタンパク質に対して抗体を作り免疫が過剰に反応してしまいます。
抗体を作ってしまう食品は患者さんによって個人差がありますが、お肉の中では豚肉と牛肉が炎症を起こしやすいと報告があります。
症状が落ち着いてお肉をとるときは、まず脂肪分の少ない鳥のササミ肉や魚などから始めてみましょう。
他に注意が必要なポイント
食物繊維は特に腸に狭窄がある人は控えめにしましょう。閉塞を招く可能性があります。
香辛料などの刺激物は腸の動きを活発にさせることもあるのでなるべく避けましょう。エネルギーの吸収が不十分の可能性があるためエネルギーは主食でしっかりとり、高カロリーを心がけましょう。
主食となるご飯やうどんなどは、比較的安心して食べることができます。症状がよければパンやパスタなども様子をみて食べてみましょう。クロワッサンなどの脂肪分の多いパンは控えめに。
症状が落ち着いた状態 (寛解期) での食事
寛解期においても再燃を防ぐためにお腹に優しい食事を続けましょう。しかし、食べられないものは特別にありません。お肉や脂肪分が多い食べ物はお腹の様子をみて量や頻度を守ってとりましょう。
食事により症状が悪化することがあれば記録し、医師などに相談しましょう。自分に合わない食事は避けて、食べ過ぎないようにしましょう。
医師に処方されている栄養剤
医師から処方されている栄養剤はお腹に優しく設計されています。
炎症を起こす可能性のあるタンパク質は含まれておらず、栄養源としてアミノ酸が含まれています。アミノ酸は体内でタンパク質が分解されるとできる必須の栄養成分です。
またお腹を刺激する脂肪分も必要最低限の量になっています。患者さんの栄養管理に適した製剤になっています。
味の好みがあると思いますがフレーバーに種類があるので薬局などで相談してみましょう。