紹介

クローン病は喫煙で悪化する?

クローン病と煙草の喫煙の関係性

以前に当サイトの「潰瘍性大腸炎とタバコ喫煙の関係」の中で、潰瘍性大腸炎はタバコの喫煙で発症リスクが下がることを記事しました。

しかしその記事の中でも、潰瘍性大腸炎において喫煙は発症リスクが下がるけれども同じ炎症性腸疾患のクローン病ではリスクが全く逆で、喫煙が発症危険因子であると触れました。

今回はクローン病と喫煙に関してもう少し詳しく見ていきましょう。

喫煙は潰瘍性大腸炎の発症リスクを下げ、クローン病は上げる。

クローン病患者は禁煙すべきなのか?

クローン病(Crohn’s Disease)とは、主体として大腸や小腸などの消化管粘膜に慢性の炎症性病変や潰瘍形成を引き起こす原因が不詳の炎症性腸疾患と呼ばれる症候群のひとつです。

国の特定難病疾患に指定されており、消化管と呼ばれる領域の発端である口腔粘膜から終点である肛門部位にかけて、特に小腸末端部を中心としたあらゆる場所に炎症や潰瘍が出現するという特徴を有しています。

このように小腸や大腸といった広い消化管範囲にかけて炎症が惹起されてしまうクローン病では、実は喫煙そのものが発症に関連する危険因子であり、かつ症状を再発する促進因子であると多くに調査研究で報告され判明されつつあります。

前述の通り、クローン病における明確な原因はいまだに分かっていませんが、複数の遺伝子や複雑な環境因子などによって本疾患は発症するのみならず、喫煙自体も疾患発症率や病状悪化率などに関連するリスクを上昇させると言われているため、仮に喫煙を続けているクローン病患者さんがいらっしゃればその方にとっては禁煙すること自体がとても重要なテーマになり得るのです。

統計的に喫煙はクローン病発症や症状悪化リスクがある。

クローン病の人が喫煙するとどうなるのか?

タバコはこれまでの調査から数々の消化器疾患における臨床経過に少なからず影響を与えることが判明してきております。

クローン病は、主として出血を頻回に伴う慢性的な下痢症状や定期的に引き起こされる腹痛、さらには発熱や食思不振、体重減少といった全身症状を伴う原因不明の小腸末端部分から大腸に及ぶ炎症性消化器疾患であり、喫煙することによりその発生リスクが喫煙しない通常の場合より約4倍も上昇するれっきとした喫煙関連疾患なのであります。

クローン病においては喫煙すること自体が本疾患を発症させる危険因子であると同時に、クローン病患者ではタバコの喫煙はせっかく症状が寛解して軽快したとしても再発を促進させ腹部症状などを再燃させるファクターであるということを決して忘れてはならないということです。

受動喫煙によるクローン病

さらには、最近になってクローン病を含む炎症性腸疾患と幼少時における親御さんや側近にいらっしゃる人々が喫煙することによって否応なしに子供たちが被る受動喫煙との関連性が着目されており、それと共にタバコ喫煙が特にクローン病で苦悩する下痢や血便などの下部消化管症状に与える影響を検討することは今後重要な課題項目であると考えられます。

受動喫煙受動喫煙によるクローン病発症

なぜタバコを吸うとクローン病が悪化するのか?

喫煙と生体とのかかわりはまさに多面的であり多角的であると言えます。

御存知の通り、タバコは様々な化合物を含有しており、これらの物質が直接的に、或いは間接的に脳など中枢神経系のルートを介して各組織の微小循環、ならびに運動機能の調節や免疫系の活性度に多種多様な一定の効果を及ぼしていることが知られています。

しかしながら、詳細には喫煙がどのようにして消化器疾患や胃腸症状の発現に関連しているかについては従来ではあまりわかっておらず、例えば潰瘍の発生と治癒段階で強く関係し重要な因子とされている胃酸の分泌レベルや胃腸粘膜領域における微小循環の血行動態が喫煙によっていかほど影響を受けるのか精密に熟慮されるようになったのはついこの間のことなのです。

喫煙と炎症発生の因果関係の解明はまだまだこれから

そうした調査研究の成果もあり、タバコを喫煙することはクローン病の発症そのものや治療によって寛解した後の再発および再燃率などに関与していることが分かってきましたので、クローン病の方はもちろんのこと若年者でも喫煙している場合には禁煙することをお勧めします。

クローン病患者の禁煙まとめ

繰り返しになりますが、クローン病罹患下での喫煙は症状憎悪の要因と言われていますので、ぜひ該当される方におかれましてはタバコを吸う事をできる限り控えた方が賢明と言えるでしょう。

そして言うまでもなく、クローン病の方にとっては胃腸を含む消化管全体の状態をはじめとして日々の健康管理が欠かせませんので、喫煙しないのみならず日頃より栄養バランスを存分に考慮した食事内容や十分な安息を得て、時には自分に合った適度な運動スタイルなどを実行することで自分の体調を整えましょう。

症状が落ち着いているフェーズでは、脂っこいものを回避するなど食事内容以外の制限は原則的にはありません。

うまくクローン病と付き合って、タバコを喫煙せずに症状を自覚することのない質の高い寛解状態をできるだけ長期に渡って維持して快適な日々の生活を送ることができるように工夫していきましょう。