炎症性腸疾患のひとつに潰瘍性大腸炎という病気があります。
最近では疾患者の数も増え、また安倍首相など有名人の方もかかられていることで、だいぶ耳馴染みになったのではないでしょうか。
潰瘍性大腸炎はどんな病気?
潰瘍性大腸炎は、大腸の壁(粘膜)に慢性的に炎症がおこり潰瘍が生じる病気です。
それによって、腹痛や下血をともなう下痢を頻発します。貧血や発熱、倦怠感なども伴ってきます。
症状が活発になる「活動期」と症状が落ち着く「寛解期」を繰り返します。
大腸に炎症が続くので結腸ガンの合併を起こす場合があります。
英語では「Ulcerative colitis」と訳されることから「UC」と略すこともあります。
日本では特定疾患の指定難病に認定されています。
クローン病との違い
同じIBD(炎症性腸疾患)であるクローン病との大きな違いは、炎症がおこる部位にあります。
クローン病は小腸や大腸、ときには口から肛門までの消化器器官すべてが炎症の範囲になりますが、潰瘍性大腸炎の場合、炎症部位は大腸に限定されます。
また、クローン病の炎症が食事に影響されやすいのに対して潰瘍性大腸炎は食事の影響が比較的受けにくいとも言われています。
(※諸説あります。また「食事の内容が病気の発症原因になる」のではなく、「食事そのものが炎症を引き起こしやすい」のがクローン病という意味です。なので潰瘍性大腸炎でも寛解に向けて食事の内容を改善する治療があります。)
もう一つは、クローン病は消化器器官全てが炎症の範囲なのに対して、潰瘍性大腸炎は炎症が大腸に絞られるので、手術で根治する可能性があるということです。
潰瘍性大腸炎の種類
潰瘍性大腸炎には病変のできる部位によって大きく3つに分類することができます。
- 直腸炎型
- 左側大腸炎型
- 全大腸炎型
治療について
食事(栄養)治療
なるべく腸を刺激しないような食事をこころがけます。3Sともいわれる刺激・脂肪・繊維を多く取りすぎないことが重要になってきます。
高エネルギーで高たんぱく、またミネラルやビタミンも豊富な食事が望ましいです。
食欲がある中で限定した食事をすることは非常につらいですが、口に入れるものを見直すだけで、悩みの原因である腹痛や下血・貧血を抑えることができるので、少しづつ改善できればいいですね。
寛解時期にはそんなに神経質になることもありません。
5-ASA(アミノサリチル酸)
腸の炎症を抑える成分で、潰瘍性大腸炎の基本薬となるものです。活動期はもちろん寛解期にも継続して飲み続けることで病状を抑えます。
ステロイド
こちらも炎症を抑える薬です。アトピーなどの塗薬でも良く聞く名前ですが、潰瘍性大腸炎の炎症がひどくなってきたときにも効果的です。
ただし使用は医師管理のスケジュールのもと厳格に守らないといけません。
少しづつ使うのではなく、はじめに大量に設定して少しずつ減らしていくのが一般的です。
ムーンフェイスなどの副作用や、一定期間の使用を超えると副腎皮質ホルモンの分泌が働かなくなるリスクもあります。
免疫調節薬
自分の体に入ったきたウィルスなどの外的を体から追い出そうとする防御システムが、いわゆる「免疫」というものですが、この免疫が以上に活動し自分自身の体を傷つけてしまい大腸に炎症をおこす原因になります。
その免疫を調節する薬で炎症をおさえる仕組みです。
からだの免疫が下がってしまうので、風邪や感染症などにかかりやすいリスクがあります。
生物学的製剤(抗体製剤)
レミケードやヒミュラに代表される薬です。クローン病や関節リウマチにも用いられます。
定期的に注射や点滴投薬を行います。
血液成分除去療法
薬剤療法とは少し違いますが、透析を用いて体外に血液を循環させ血液内にある異常活性した白血球を取り除く療法です。ステロイドがきかない場合などに選択されます。
外科治療
潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症が続き、大腸の狭窄(細くなる)や穿孔(穴が開く)やガン化などの合併症が起こりえます。このような重度の症状になると大腸を切る手術が必要になってきます。
まとめ
潰瘍性大腸炎の治療にはさまざまな選択肢があります。
個人差や場合によった治療をお医者さんとの話し合いで決めていくと思いますが、それぞれに効く場合効かない場合、副作用が出る場合があります。
不安になることもあると思いますが、炎症をうまくおさえて寛解を長くキープできれば、元通りに近い日常生活を送れるようになるはずです。
体調が悪いときや悩んだり不安なときは、かかりつけのお医者さんに相談したり、支援団体や患者会の集まりなどもありますので、一人で悩まずに一緒に頑張りましょう。