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潰瘍性大腸炎に対する医療大麻CBDの可能性

医療用大麻
(2022/10/7追記)来年の通常国会にも審議入りを見据え、厚生労働省は大麻取締法の改正の方向性をとりまとめました。

世界的に大麻解禁の気運が高まってきています。
アメリカではすでに13州もの州が大麻の規制緩和を行い2021年3月にはいよいよニューヨーク州においても娯楽用のマリファナの使用が合法化されました。
医療用大麻を認めている州を含めると30州を超えます(2021年現在)。

日本でもそのニュースはテレビでも流れるようになり、「医療用大麻」「CBDオイル」などの言葉がすでに耳馴染になりつつあります。

大麻の効用や犯罪性であったり中毒性、芸術とのリンク、または日本での大麻の非合法の歴史や、今の世界的な大麻解禁の流れはここでは深くは触れません。
今後日本で大麻の取り扱いが変わるのかも、今の段階では知る由はありません。

われわれにとって大事なのは「大麻は潰瘍性大腸炎に効くのかどうか」です。(もしくは「クローン病に大麻は効くのかどうか」)

医療用大麻とは

そもそも大麻がなんであるのか?という話は出来る限り割愛させてもらいます
乾燥大麻をタバコのように肺に届くまで吸えば、お酒以上の「酩酊」をもたらすとして日本では非合法ドラッグとして規制されています。

では医療用大麻となると、そのタバコのようなものを吸えば体が健康になるのか?と単直に思うでしょう。
病院の先生から煙草の代わりに大麻をもらって「これを吸えばお腹が痛くなくなるよ」と言われるのが、医療用大麻なのか?間違ってはないのかもしれません。

大麻にはカンナビノイドという生理活性物質が多く含まれており、このカンナビノイドというヤツの一部を抽出してコントロールしながら人体に作用させていきましょう、というのが医療用大麻の大枠です。

大麻が人体にどのように作用してくれるのかを見てみましょう。


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医療用大麻の効用とは

カンナビノイドの一部の中に、THC(テトラヒドロカンナビノール)という成分とCBD(カンナビジオール)という成分と、この2つが大きく有名です。
この2つ以外にも100種類以上のカンナビノイド成分が解析されはじめており、この研究の進歩が近年になり”マリファナは安全だ”と世界的に言われ始めた要因の一つです。

この2つに成分に関しては、ごくごく簡単に言えばTHC(酩酊作用)・CBD(有効成分)と思ってもらってもここでは構いません。

THCというカンナビノイドがお酒を上回る酩酊(向精神性)を生み出すため、出来るだけその効用を絞って(ときには省いて)ドラッグとしての大麻をそぎ落として利用することが可能になりました。
THC自体もただ酩酊作用がある側面だけでなく、痛みの緩和や腫瘍の成長を止める役割もあります。

医療大麻の真骨頂であるCBDにおいては、様々な人体への”良い”作用が確認されており日本の法律においてもCBD成分からなる製品の輸入や利用は違法ではありません。
具体的にエビデンスがとられた作用として①痙攣②不安神経症③炎症④がん細胞の成長抑制⑤抗精神など、そのほかにもリラックス効果・痛みの緩和などがあげられます。
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患だけでなく、睡眠障害・ガン・てんかん・HIV・PTSD・緑内障といった具体的な病状にも効果があるのではないかと研究が進められています。

簡単に言えば「不安・不眠・痛み」にすごく効くのでは?いろんな病気に応用して当てはめれるのでは?というのが医療大麻の効用がもたらす可能性なのです。

CBD成分を使った製品

上にも書いたとおり、日本の大麻取締法においては「(違法化の対象は)麻の茎および種子それら由来の製品は除外される」とあり、茎や種子から抽出されるCBD成分は違法の範囲ではありません。

しかしながら実際には茎や種子からはCBDはほぼ抽出することができず、CBD事業を行う企業は有機化学合成のCBD成分を採用している場合が多いです
日本で「国産CBD製品」と唄いCBDオイルなどをリリースしている事業所は、当然日本で大麻草を栽培することも輸入することも原則違法であるため、原料であるCBDを輸入し最終工程を日本で行い製品として出荷するという方法をとっています。

CBD成分を含んだ製品としては、CBDグミ・CBDオイル・CBDサプリメント・CBDクリーム・CBDドリンク・CBDパイプなどなど多岐に渡ります。

やはり製品はもとより原料も輸入に頼ることから、やや割高な商品にはなってくるが、ラインナップは年々豊富になっているため一度トライしてみても良いのかもしれません。
いわゆる「怪しいクスリ」というイメージは全くなく、おしゃれで洗練されたパッケージが多いため少し驚くでしょう。



医療大麻は潰瘍性大腸炎にはまだ早い

CBDオイル
すっかり医療大麻あげあげの雰囲気を作ったところで申し訳ないが、しっかりと潰瘍性大腸炎やクローン病の病状を緩和させるのにCBDであったり医療大麻を活用していこうと思うのは残念ながらまだ早いです。

というのもヨーロッパやアメリカでも地域や州によっては、嗜好品としてまたは医療用として限定的に大麻の利用は解禁されつつあるが、米国連邦政府は「大麻が違法薬物」という立場のままであり、国際麻薬統制委員会は大麻を医療用大麻として使用することを容認しておりません(2009年次報告書)。
また米国食品医薬品局(FDA)も、個々のカンナビノイドを含むいくつかの薬を承認しつつも、医療用途にも大麻植物を承認はしていません。続けて「THCまたはCBDを含む製品はサプリメントとして合法的に販売できない」とも判断しておりません。

個々の州ではじわじわと解禁の流れが広がりつつあるが、大きな連邦政府としてはまだ容認の立場を取っておらず今後どうなっていくのかも不明と言わざるを得ません。

日本の医療大麻解禁は動きつつあるのか

日本の厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』のホームページに、海外からの情報として医療大麻に触れたページがあります。
このページの中で医療大麻が潰瘍性大腸炎やクローン病の治療に役立つか?という設問に対して、研究をもとに2019年11月にNCCIHというアメリカ国立補完統合衛生センターで発表されたデータを日本語訳した内容が紹介されています。

2018年のレビューでは、活動性クローン病患者を対象に、吸引大麻またはカナビスオイルとプラセボとを比較した3件の研究(参加者合計93名)について検討しました。この疾患の臨床的寛解において、大麻/カナビスオイル群とプラセボ群との間に差は認められませんでした。大麻やカナビスオイルを使用している人の一部で症状が改善しましたが、好ましくない副作用が出た人もいました。大麻やカナビスオイルの有益性(ベネフィット)が有害性を上回っているかどうかは不明でした。

2018年のレビューでは、活動性潰瘍性大腸炎患者を対象に、吸引大麻またはCBDカプセルとプラセボとを比較した2件の研究(参加者92名)について検討しました。CBDの研究では、臨床的寛解において2群間に差は認められませんでしたが、CBDを摂取している患者でより多くの副作用が認められました。吸引大麻の研究では、大麻群において8週間後に疾患活動性の指標が低下しました。副作用に関する情報は報告されませんでした。

つまり有用的なエビデンスはここでは証明できなかったのです。

では日本では医療大麻については消極的で、今後もCBDグミをネットショッピングして食べるぐらいしかできないのでしょうか?

大麻取締法の法改正が進む

2021年5月に厚生労働省は大麻取締法に「使用罪」を創設することを決めました。

今までは大麻の所持は違法であったが、麻農家がうっかり大麻成分を吸ってしまうかもという懸念から「使用」については違法の対象ではありませんでした。

一方で現在、規制の対象になっている大麻草を原料にした医薬品については、国内での使用や製造・販売などを認める方針も盛り込みました。

この内容は来年2022年の改正を目指します。

年々グリーンラッシュとCBDビジネスが加速していく中で、ようやく医療の選択肢として日本も医療大麻の使用が認められる日が来そうです。

そうした中で日本国産のCBD製品の製造であったり、日本の医療管理下において医療大麻が潰瘍性大腸炎やクローン病だけでなく、さまざまな病気の緩和に有効であることが実証されていくことを願います。