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クローン病と幹細胞治療について

羊膜MSC

近年、抗TNF-a抗体(バイオ医薬品)を用いた治療に代わる幹細胞治療の研究が進んでいるのはご存知でしょうか?
でしょうか?
バイオ医薬品は患者の1/3が効かない(一次無効)、さらに1/3が経過中に効果が無くなる(二次無効)などの課題がありましたが、それらの問題を解決する特効薬になってくれるのでしょうか?

今日は幹細胞治療について見ていきましょう。

クローン病患者に対する幹細胞治療の位置づけとは?

クローン病のおさらい

クローン病は主に口腔内から肛門末端までに至る消化管領域に炎症を起こして、びらんや潰瘍を形成する病気であり、慢性的な長い経過のなかで症状が良くなったり悪くなったりすることを繰り返す特性があるために継続的な治療が必要とされています。

特に小腸や大腸が好発部位と言われますが、クローン病はその病因がいまだに十分解明されず不詳であるために一定の根治療法は存在しません。

日本でも2014年時点で4万人を超えており、年々増加しております。

クローン病は重症度別に治療法が異なる

具体的な治療方法としては、診断時や活動期において寛解導入を主目的としたものと、症状が比較的安定している時期に寛解維持目的で実施される治療に大別されます。

一般的には、①軽症の場合においては 5-アミノサリチル酸製剤や栄養療法が行われ、②中等症から重症の場合には経口ステロイド剤や抗菌薬が使用されています。

③効果不十分な場合にはインフリキシマブなどの抗Tumor necrosis factor (TNF)-α抗体製剤が用いられ、④あらゆる薬物療法が無効である難治性ケースでは、血球成分除去療法を併用することが検討されます。

それでも約半数弱のクローン病患者では画期的な抗 TNF-a抗体を用いた治療を施しているにもかかわらず、二次無効という薬物効果の減弱をきたす問題も指摘され、さらなる新規治療薬の開発が望まれてきた背景がありました。

そこで近年になって、治療抵抗性や重症のクローン病患者に対して間葉系幹細胞(MSC細胞)を用いた幹細胞治療の効果が立証されてきています。

この間葉系幹細胞は胚性幹細胞(ES細胞)や昨今注目されている人工多能性幹細胞(iPS細胞)とともに、再生医療材料として大いに期待されています。

待ち遠しい再生医療によるクローン病の治療
ドクターベジフル青汁

骨髄由来の間葉系幹細胞を用いた幹細胞治療について

前述したように難治性疾患であるクローン病では、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などの慢性炎症や自己免疫反応を抑制する薬物が治療に広く用いられていますが、これらの治療内容が決してすべての方に有効ではなく必ずしも著効するとは限りません。

最近になって、骨髄由来の間葉系セルを用いた幹細胞治療が積極的に応用されて、様々な研究よりその細胞による免疫調節作用が効果を発揮してクローン病に対する臨床効果が示されてきました。

間葉系幹細胞(MSC:Mesenchymal Stem Cell)は主に骨芽細胞や軟骨細胞、脂肪細胞などの主に間葉系と呼ばれる細胞に分化する能力を有している組織幹細胞の一つと言われています。

従来からこの細胞自体に抗炎症作用や免疫調整作用を有することに注目が集まっていましたが、これらの細胞を採取する際には身体へのある程度高度の侵襲を伴い、また一度の採取で得られる細胞数は少量であるために、現実的に移植に必要な細胞数を確保するには一定の培養期間を要することが問題視されていました。

それらに加えて、自己骨髄由来の間葉系幹細胞では、白血病など骨髄疾患のドナーでは不適合であることや治療に必要な細胞数を得るためのマンパワーにかかる経済的コストが高いといった制限もあります。

骨髄由来の間葉系幹細胞(骨髄MSC)は身体への負担が大きい・高コスト・採取数が少ないのがネック
羊膜由来の間葉系幹細胞(兵庫医科大HPより)

クローン病に対する羊膜由来の間葉系幹細胞を用いた最先端の幹細胞治療とは?

これまで数多くの医学的研究によって、羊膜由来の間葉系幹細胞がクローン病の動物モデルにおいて一定の治療効果を発揮することが証明されつつあり、実際に臨床の場においてもその治療成果が期待されています。

兵庫医大と北海道大学病院の医療研究タッグ

兵庫医科大学病院や北海道大学病院の研究グループでは、骨髄由来の間葉系幹細胞よりも、幹細胞数が多く、増殖能も高く、採取に際してほとんど侵襲性が皆無である「羊膜由来の間葉系幹細胞」を用いたクローン病に対する細胞治療研究を進めてきました。

これまでの臨床研究で、この羊膜由来の間葉系幹細胞が骨髄由来の場合と同様に多分化能や免疫抑制機能を所有することが明らかにされてきました。

先行して再生医療製品として使用されてきた骨髄由来の間葉系幹細胞が骨髄採取する点で侵襲性を伴う他にコスト面や品質面での課題があった一方で、羊膜そのものは協力的な妊婦さんから通常処置で得られる胎盤から分離されるものなのです。

そういった観点から、本細胞採取するうえでは余計な侵襲性は全く無く、出産してから一定期間後に改めて羊膜のウイルス感染を否定しますので安全性が向上していると言えます。

さらに、1つの羊膜から数百~数千万個の間葉系幹細胞が獲得できますので、短期間に大量の有効的な細胞を得ることが出来ます。

羊膜間葉系幹細胞製剤の開発KANEKA「再生・細胞医療総合サイト」より

今後は、低コストで、倫理的配慮すべき問題点が少なく、安全性が飛躍的に向上した製造容易な羊膜由来の間葉系幹細胞による治験薬製剤化がさらに進歩して、迅速にクローン病に対する治療に応用されて、より多くのクローン病患者さんが救済されることを願ってやみません。

兵庫医科大学|~世界初の治験!クローン病や急性GVHDに対する新たな細胞治療~ 「羊膜間葉系幹細胞の治験製品提供と医師主導治験」を開始 (hyo-med.ac.jp)