日本人は胃腸を含む消化管の治療を受けている人が約1000万人いるといわれており、胃腸の不調を感じている人が少なくありません。
また、同時に日本は圧倒的な源泉によりに温泉大国といわれており、日本全国に2万を超える温泉施設があります。
古くから日本人は温泉に親しみを感じ、日本の文化として根付いてきました。時にはその温かいお湯で病気や怪我を治してくれる「湯治」として効用・薬用を期待されています。
【追記】
2021年12月15日、温泉による免疫効果を大分県の別府市と共同研究している九州大学が「温泉への入浴は痛風や過敏性腸症候群や肝臓病など特定の病気のリスクを下げる効果がある」との中間報告を発表しました。
詳しくはこちらのページで紹介しております。
日本人の消化器系の病気になりやすい?!
日本人は消化器系が弱いという話はよく聞きます。
実際に日本人のがんで最も多いのも消化管のガンです。
日本人と他の国とで何故こういった違いがあるのでしょうか?
日本人の腸内細菌叢の特徴
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは別の呼び方で「腸内フローラ」と言われています。こちらのほうが聞き馴染みがあるかもしれませんね。
早稲田大学など共同研究グループは欧米や中国など11カ国の腸内細菌叢のデータを比較しました。
すると日本人の90%の人の腸内細菌叢には、海苔やワカメに含まれる食物繊維を分解する酵素の遺伝子が含まれているのに対し、他の国では15%以下ということが分かりました。
また代謝機能などの生体に有益な機能を持つものが多く含まれおり、日本人の平均寿命の長さや肥満率の低さに関連するのではないかと考えられました。
では何故日本人の消化器系が弱いのか?
- 日本人の食の欧米化による消化器系の負担
- 牛乳やカフェインが体質的に合わない
- ピロリ菌が多い
- ストレスを溜めやすい
脂肪の少ない穀物や魚介を中心に食べてきた日本人は、肉食中心の欧米人の食生活に対応できる消化器ではないため、内臓に負担がかかります。
また日本人は内臓脂肪を燃やす働きのある善玉物質「アディポネクチン」の分泌量が欧米人よりも遺伝的に少ないため、内臓脂肪がつきやすい弱点もあります。
日本人をはじめアジア人は、カフェインが体質的に合わない遺伝子を持つ人が半数近くもいるといわれています。
ピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍や胃がんの主原因ですが、日本ではいまだにピロリ菌の感染率が高いです。
日本国民の約半数が感染してると言われております。
日本人は心配性です。外国人に比べて必要以上にネガティブに受け取りがちだと言われています。
過敏性腸症候群は検査で異常が見つかりませんが、ストレスが主な原因の場合が多いと言われてます。
ほかにも様々な原因がありますが、大きくは食事や環境の変化により消化器内臓に負担が大きくなっていることが原因です。
「身体の痛みに効く」湯河原温泉を自宅で
東日本の温泉地で唯一「万葉集」に詠われた由緒ある湯河原の古湯。奥湯河原の温泉は美肌の湯とも呼ばれ、お肌に優しく疲れを癒す無色透明のトロリとした濃さが特徴の温泉です。
湯治と呼ばれる温泉の効用
日本だけでなくヨーロッパでも温泉は医療目的で入浴されております。
温泉に入って気分をすっきりさせてストレスを軽減させるだけでなく、温泉法で定義されている温泉の泉質により入浴や飲泉することで消化器系への効用が期待されます。
消化器系疾患に効果があると言われる泉質
単純温泉(単純泉) | 含有成分が一定量に達していないため刺激が少なく体に優しい温泉です。 鎮静効果大きく病後回復、疲労回復、ストレス解消、健康増進などに効能があります。 |
二酸化炭素泉(炭酸泉) | 炭酸ガスを含む温泉。皮膚から炭酸ガスが吸収されることにより血液の循環を促します。血圧を下げる効果があります。 |
塩化物泉 | 塩分が主成分の無色透明の泉質。塩分が肌の水分蒸発を防ぎ、保温保湿効果が高くなり体が温まります。 また塩分による殺菌作用も効用があります。 |
酸性泉(酸性温泉) | 火山の噴火口付近に湧く日本特有の酸性度の高い泉質です。 pH値2~4と低く酸性のため殺菌効果がある。肌への刺激は強く新陳代謝を促進するが、肌が弱い人はヒリヒリする可能性があります。 |
放射能泉 | 放射能というと怖いイメージがありますが、温泉中に含有されるラドンは常温で気体、湧出後は空気中に散飛するため全く心配ありません。 浴用によって腎機能は改善され鎮静的に作用するので、神経痛、リューマチ、自律神経過敏状態等に利用されます。 |
鉄泉(含鉄泉) | 鉄を多く含む泉質です。温泉1kg中に総鉄イオンが20mg以上含まれているもので、陰イオンによって炭酸水素塩型と硫酸塩型に分類されます。 湧出時は無色透明ですが、空気に触れることで鉄が酸化し、浴槽では特徴的な茶褐色となります。そのため「赤湯」と呼ばれることもあります。 |
日本三大胃腸病の湯をご存じですか?
群馬の四万温泉、宮城県の峩々温泉、大分県の湯平温泉を3温泉を合わせて「日本三大胃腸病の湯」と言われております。
日本にはこの3大名湯以外にも沢山の効用のある温泉がありますが、今回はこの3温泉を紹介していきます。
新型コロナウィルスで国内の旅行も容易に出来ない時世ですが、コロナが収まり時間に余裕があればゆっくりと温泉旅行にいきたいですね。
「硫酸塩泉の主成分である硫酸イオンは血液に多くの酸素を送り込む作用があり、動脈硬化の予防になります。」 (健康づくりシステム研究会会長:植田理彦氏)
群馬県の四万温泉
「40,000もの病気に効く温泉」という語源を持つ群馬県の四万温泉の歴史は古くからです。
平安時代中期(987~989年)に源頼光の家臣であった碓井貞光が、越後(現在の新潟県)から上野国(現在の群馬県)へ山を越える際に、この地で夜中じゅう読経をしていたところ、子どもが目の前に現れて「私はこの山の神霊です。あなたが今、お経を熱心に唱えていることに感心しました。40,000もの病を治すことのできる霊泉を与えましょう」との神託を耳にし、そのお告げ通りに温泉を発見したとする説が現在では有力です。
その後の室町時代に温泉宿街が出来はじめ、江戸時代には旅行者で賑わっていた文献が残っています。
四万温泉の効用
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉に含まれるメタケイ酸の成分による保湿効果から美肌効果があると考えられています。
さらに、高めの泉温と豊富な湯量によって得られる温熱効果・水圧によるマッサージ効果・浮力による筋肉の緊張緩和効果があり、内臓機能が活発になり、疲労回復をも促します。
宮城県の峩々温泉
峩々温泉は海抜1841mの蔵王連峰の麓に立つ一軒宿です。
「峩々」とはその漢字からも分かるとおり荒々しく険しいという意味です。
峩々温泉が湧き出したのは平安時代の頃と考えられています。しかしこの温泉が発見されたのはそれから1,000年以上もあとの1869年(明治2年)のことです。
開湯者の竹内時保はここを整備し1876年(明治9年)に「峩々温泉」を開きました。現在は竹内時保から数えて六代目の当主が湯を守り続けています。
峩々温泉の効用
この温泉の泉質はナトリウム・カルシウム・炭酸水素塩・硫酸塩泉です。
また伝統の湯治作法があることが有名です。
峩々温泉の旅館は南蔵山の山肌を見ての露天風呂が最高です。館内も新築されながらも素朴な木の造りに食事やサービスを行き届いています。
付近の自然を感じるトレッキングも行っているので、温泉だけでなく蔵山の良さ全てを感じられる旅行になりそうですね。
大分県の湯平温泉
湯平温泉の歴史は鎌倉時代に遡ります。江戸時代と明治時代の災害によって一度は温泉街として大きなダメージを受けますが地元の方たちの復興のエネルギーで再び大人気の温泉街として愛されてきました。
湯平温泉を含む湯布院は「東の軽井沢・西の湯布院」と称されるほどです。
湯平温泉の象徴とも言える石畳は落ち着いた湯平温泉の性格を醸し出しリピート利用客が多い温泉街です。
湯平温泉の効用
昭和34年5月に環境省が指定する「国民保養温泉」温泉地として指定されております。
ナトリウム塩化物・硫酸塩泉という主泉質になります。
この泉質は火成岩の多い地層から湧出する温泉で、太古の海水が閉じこめられた「化石水」が地下の大深度からあらゆる鉱石の成分を溶かしつつ湧出するもので、食塩以外にも多くの成分要素が入ったものです。
この湯平温泉のお湯は特に胃液の分泌を促進する効果で知られています。
クローン病や潰瘍性大腸炎の方におすすめの温泉まとめ
さて今回は消化器系に効く3大温泉を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
まだまだクローン病や潰瘍性大腸炎の病原解明には時間がかかるかもしれませんが、この新型コロナウィルスで家から出られないストレスも相まってそろそろ旅行にでも行きたいですよね。
日本古来よりの伝統的な療法としての湯治の旅に時間もストレスも忘れてひとっ飛びしたいですね。