紹介

クローン病と女性の妊娠と出産

クローン病女性の妊娠と出産

クローン病であっても、普通に妊娠、出産はできます。

症状がおちついている寛解期であれば、妊娠・出産の際にも大きな問題は起こらないことがほとんどです。
しかし、クローン病に伴う腹痛や便が漏れる心配から、性交渉を避ける女性が多くなることや、病気の心配や不安から、結婚、妊娠、出産を避ける傾向もあるようです。

クローン病と妊娠

妊娠することで、クローン病が悪化することはありません。
しかし、妊娠を心配するあまり、自分で勝手に薬をやめてしまうと逆に病気が悪化することがあります。

クローン病の悪化や再燃は、妊娠に対して早産や流産などの危険を高めることになるので、再燃させないためにも治療は続ける必要があります。

クローン病でも妊娠できる?

実際に、多くのクローン病の患者さんが妊娠、出産しています。クローン病だからと言って、妊娠や出産が制限されることはありません。
しかし、病気の活動性が高い活動期では、腹痛や下痢などのせいで女性が性交を行う頻度が下がります。そのために妊娠しにくい状況であるかもしれません。

薬は飲んでいても大丈夫?

妊娠中の薬の使用については、病気の症状を加味して決めます。妊娠中は、薬の作用と副作用を考えたうえで、薬の種類や量を変更することもあります。
その時の病気の症状によって、使用する薬の有益性と危険性を良く考えて治療方針を決定していきます。できる限り、症状の落ち着いている寛解期を選んで計画的に妊娠することをお勧めします。

妊娠を希望している場合や、妊娠がわかったときは直ぐに主治医に伝えましょう。

妊娠して、薬の影響が心配だからといって無理やり薬物治療を中止すると、かえって妊婦さんの症状が悪化することがあるので、慎重に主治医と相談して継続する必要があります。

5-ASAや中等量までの経口ステロイド薬、経腸栄養療法は安全だと考えられています。

しかし、免疫調節薬(アザチオプリン、メルカプトプリン)は胎児の奇形や、低体重に関係があるため、避けたほうが良いと言われています。

クローン病と授乳

潰瘍性大腸炎の女性の授乳

どのような薬でも、微量ですが母乳に薬の成分は移行してしまいます。

しかし、それがすべて有害とも限りません。
母乳を赤ちゃんに飲ませたいからといって、服薬を止める必要はありません。

授乳中のクローン病の治療は?

薬による治療を継続している場合には、粉ミルクによる人工栄養で赤ちゃんを育てたほうが良いという意見もあります。一方で、母乳によるメリットもあり、クローン病の治療薬が母乳に分泌される量は微量です。そのため、母乳での育児をあきらめる必要はありません。
栄養療法では、授乳は全く問題なく、安全です。

授乳して乳児に影響はあるの?

クローン病の治療薬が母乳に移行して、赤ちゃんに悪影響を及ぼした事例はほとんど報告されていません。

  1. 5-ASAという治療薬は母乳へ移行することがわかっていますが、通常の使用量では安全だと言われています。しかし、授乳中の高容量の5-ASAの使用は避けたほうがいいかもしれません。まれに赤ちゃんに下痢が起こる場合があります。
  2. ステロイド薬は、母乳中にも分泌されることがわかっていますが、赤ちゃんが母乳から摂取する量は、母親に投与された量の約1%と言われています。普通の内服の量では赤ちゃんに大きな影響を与えることがありません。
  3. ただし、免疫抑制剤やインフリキシマブ・アダリムマブについては、授乳への安全性ははっきりとわかっていないので十分に注意してください。

薬物治療をしている場合には、100%安全性が保障されているわけではありませんが、実際に問題が起こっていることは稀です。
必要以上に怖かる必要はありません。
クローン病でも、妊娠も出産もできます。病気を悪化させることが赤ちゃんにとって一番不利益なことですので、心配なことは直ぐに主治医や薬剤師と相談しながら、安心して薬物治療を続けましょう。

子供を産みたいと思ったら、まず主治医に相談してみましょう。